『コンビニ人間』あらすじ付き作品紹介及び考察

小説

まえがき

 お金がない・出会いがない・時間がない という3つのないが嫌いだ。だってそんなことを言ったところ、だからなんだ。となるわけで、たしかに言うのはタダだから構わないが、あまり吹聴するのはオススメしないね。だってね、それらは全部自分でなんとかするものなのだ(自分の問題だ)。とは分かっている(つもりだ)。

 私の話(私の話しかしないから、こんな断りは不要なのだけどね)、たとえば「お金」さ。私が貰っているお給料はさ、たぶん多くも少なくもない。平均的、普通だ。まあ、神様から誰かさんがもっとくれるって言うのなら、ありがたかく頂戴する。あって困るものではない、ということは分かる。でも、今のままでいいさ。あまり高望みもしない。普通で、平均的に生きるよ。私には夢があるから、色々とそれで十分なんだ。

 それで、出会い!? 大丈夫、それも間に合っている。あの頃とは違う。結婚した。娘もいる。よくやっているよ。世間一般の、普通の家庭さ。

 そして時間の話になる。「ない」とは言いたくはない。そんなセリフはね、カッコ悪いから言わないよ。ただ、まだまだ「足りない」とは思う。ほんとうの話。だってさ、どうしたって仕事はしなきゃだし、クソ! だって、他にやりたいことが山ほどあるんだ。まあそう言えるのは幸せものなんだろうね。こうやってさ、文章を紡いでいるのが楽しい。

 読んでくれて、いつもありがとう。なんかさ、報われる、すごく嬉しいんだ。

 たまに「暇だ」ということを聞いて、耳を疑う。私にそんな概念はない。それにそれは、あまり明るい話じゃないよね。ちょっと悲しい。だってさ、世の中には読みたい本が、観たい映画が、溢れているっていうのに―ね。

 それで、情けないことに風邪を引いたわけ。身体が重く、思考が遅れ、いつもなら難なくこなせる作業に時間がかかる。クソ! ただでさえ渋滞しているんだぜ―もっと早く処理したい。記事を書きたい。だのに……人間の身体は、こういうときに「もう少し休め」と言ってくる―。

 が、この小説の主人公、古倉恵子は、たぶん風邪を引かない。
 正確に言えば、風邪を「引いたことにしない」。それが、この小説の主人公だ。

HARU
HARU

古倉恵子は風邪を引かない。

PENくん
PENくん

岸部露伴は動かない。みたいに言うね。

基本情報(ジジョウセツメイ)

正常に、生きる
―村田沙耶香『コンビニ人間』論

 全世界累計発行部数は240万部超。村田沙耶香著、2016年刊行、第155回 芥川龍之介賞受賞作。近い時期に又吉の『火花』があって霞むかもしれないが、それは勘違いだ。こいつは、かなり売れた芥川賞作品だね。ちなみに『火花』は3倍、300万部超です。スゴ! でもね、本当に私も大好き。又吉は「芸人」でもあるけど、ちゃんと掛け値なしに「作家」だね。それに異論はないはずだ。そうそう、6年ぶりに新作出るね! 楽しみ!! で、これは2位。1位は村上龍の『限りなく透明に近いブルー』です。約350万部、そ・し・て、私、これも大好き!!(ごめん、この作品に、「大好き」はちょっと合わないかもww) って、結局のところこの2作が飛びぬけているだけで、本作の『コンビニ人間』はトップ10に入る。実際、ミリオンセラーはすごい話。いい? 純文学だよ、と、余談余談。つづく、

主人公は古倉恵子、職業はコンビニアルバイト―彼女ハ、社会的成功者デハナイ。ダガ、社会不適合者デモナイ。彼女ハ、適合ソノモノダ。

―ドクリョウメヤスジカンハ2ジカン30プン。

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簡単なあらすじ(キノウセツメイ)

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて……。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。解説・中村文則

村田沙耶香『コンビニ人間』文春文庫 裏表紙より

マニュアルの中の安定
 古倉恵子は、幼いころから周囲とうまく噛み合わなかった。善悪の判断、感情の機微、場の空気。それらが直感的に理解できない。
 だが、コンビニで働き始めてから、世界は整理される。
 挨拶の言葉。レジの手順。立ち位置、声の大きさ、笑顔の角度。すべてが決まっている。すべてが共有されている。コンビニは、彼女にとって初めて「正解が明示された場所」だった。

 恵子は言う。
 「コンビニにいるとき、私は正常だ」彼女は人としてではなく、機能として世界に接続される。

面白いと思うところ(セイギョサレタカンジョウ)

 この小説の最大の魅力は、感情が、感情として描かれないことです。
 「喜び」は「適切な反応」に、「悲しみ」は「不具合」に、「怒り」は「ノイズ」、と。
 すべてが機能として記述される。
 恵子は泣かない。悩まない。彼女はただ、環境に合わせて最適化される。

 途中、文章が急に冷たく、平坦になる。まるで、システムログを読んでいるみたいだ。
 そして時折、「セイジョウ」「フツウ」「イキル」と、カタカナが混じる。これは装飾ではない。

 きっと、意味が摩耗した言葉を、いったん部品に戻すための操作なのだろう。

こういう人にオススメ(テキゴウシャ)

・「普通」でいることに、たまに息苦しさを感じる人
・社会小説が好きだが、説教は嫌いな人
・感情移入より構造を読むのが好きな人

逆に、

・明確な成長
・分かりやすい救い

 を求める人には、向かない。

この小説は、あなたを肯定しない。ただ、あなたを観察する。

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読んだ人向け

文体について(どうして村田沙耶香は、こんなにも冷たいのだろう)

 文章は、徹底して乾いている。感情が語られない。共感が誘導されない。喜びや悲しみは、
 内面の動きとしてではなく、「適切」「不適切」という評価で処理される。これは、欠如ではない。意図的な選択だ。なぜならば『コンビニ人間』は、

人格の物語ではなく、システムの物語だからだ。

 ときどき、「普通」「正常」「社会」といった言葉が少しだけ異物のように浮かび上がる。
 それは、私たちが何気なく使っている言葉が、実はどれほど曖昧で、暴力的かを示すための操作にしか過ぎない。

「普通圧力」の正体について

 この作品で最も不穏なのは、古倉恵子ではない。周囲の人々だ。彼らは悪人ではない。親切で、常識的で、社会的だ。だが彼らは、同じことを繰り返す。

―結婚しないの?
ねえ、なんで、なんでなの

―正社員にならないの?
えっバイト!?どういうこと?それじゃあダメだよね

―このままでいいの? 不安とかないの??
……よくないよね、ねえ

 これが
  普通圧力

お前は、お前たちは、私の何なの!!

 普通圧力とは異常を排除する力ではない。
 正常を1つに固定しようとする力である。

 恵子は誰にも迷惑をかけていない。犯罪もしていない。ただ、平均値から外れているだけ。―マイノリティ。それでも彼女は、「修正」されるべき存在になる。

 ただね、実際のところ……正直に言えば、読んでいて、少し息が詰まる。誰も怒鳴らない。誰も暴力を振るわない。なのに、逃げ場がない。「あなたのためを思って」「心配だから言うんだけど」その言葉の1つひとつが、じわじわと首を締めてくる。真綿で絞める、感じ。嗚呼、これは『ハーモニー』※伊藤計劃。
 ※久しぶりに再読しようと思う。今度記事にする、先に読んでおいて! 私の好きな小説トップ10に入る。

 これは小説の話だろうか。それとも、私たちの日常そのものだろうか?

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正常と異常の境界線について 

 物語は問いを投げかける。誰が正常を決めるのか。多数派は、なぜ正しいとされるのか。
 恵子はコンビニでは完全に機能している。一方で、同居する白羽は「普通の人生」を語りながら、ほとんど何も生み出さない。どちらが社会的に正常なのか。答えは示されない。
 私の考察。正常とは、倫理ではなく、統計の問題なのだ。これは、怖い話だね。

今村夏子『こちらあみ子』との対照

 この作品を読んだ人には、今村夏子の『こちらあみ子』を勧めたい。

 あみ子は、自分のズレを自覚しない。身体や感情が先に動き、世界に適応しない。
 一方、恵子は、ズレを自覚し、身体を制御し、世界に完全に適応しようとする。

 適応しない異常。適応しすぎた正常。方向は違っても、どちらも「普通」からは排除される。社会が求めているのは、理解ではなく配置なのだろう。

村田沙耶香が「システム化された社会」を描くなら、
今村夏子は「意味が欠落した日常」を描く作家だ。

―どちらも、「分かりやすい共感」を拒否する。

独りよがりの伏線回収

 冒頭の風邪は、伏線だ。それを回収する。
 風邪とは、身体が「もう無理だ」と訴えること。あるメッセージ。それを受け、私は休むという判断を下す。
 しかし古倉恵子は、身体に意見を言わせない。

 熱があっても、シフトが回るなら出勤する。

 彼女はたぶん、風邪を引かない。
 引かないまま、正常であり続ける。

 『コンビニ人間』は、変わった人の物語ではない。変わらない社会の物語だ。

 あなたは今、どこで「正常」を演じているだろうか。
 ―レジは次の客を待っている。

 アナタハドウオモイマシタカ?? アナタハセイジョウデスカ??
 セイジョウトハナンデスカ? 狂っているのは、ドチラデスカ……

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