『Winny』紹介および考察

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基本情報

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 2023年の日本映画、実際にあった冤罪事件について考える映画です。不当逮捕から無罪を勝ち取った7年の道のりを描いた問題作です。いな、なかなかの挑戦作です。ネット史上最大の事件。実話を基にした、挑戦と戦いの記録です! 監督は松本優作。主演は東出昌大。上映時間は127分!

 さて皆さん「Winny」って覚えていますか? 私は懐かしいなあって感じです、が、というか私、40手前の人間からすれば丁度20年前の頃は大学生でした。ちょっとパソコンに詳しい友人が、これ、まさに「Winny」を知っていて、利用していました。あの時代、ほんのわずかな間でしたが、世間を席巻していたのです。それで、このWinnyって、本当に使っていいのか? たぶん、違法性のあるものなのかもなーとか、思っていたというのが正直な感想です。
 ね、懐かしいですよね! って、この時はたぶん、まだあの言葉はなかったでしょうが、これこそ「リテラシー」ですよ。映画の劇中にもありますが、看守が金子に言います。お世話になっているよ。と。
 という、約20年前の実際のWinny事件について描いています。ジャンルはノンフィクション、ドキュメンタリー系でありますが、何より社会派。そして、真実や、正義とは一体なんであるのか、などを問うような作品となっています。

簡単なあらすじ

殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか――。
技術者の未来と権利を守るため、権力やメディアと戦った男たちの真実の物語。

2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開する。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。しかし、運命の意図が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する――。

なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか。本作は、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語である。

(『Winny』公式サイト抜粋)

 黄色マーカー部分はかなりキャッチ―ですごく好きです。
 ですが、あとの部分。私は個人的にこういうあらすじは嫌いです。「嫌い」というのは引きつけられないだけで、たしかに内容はよく分かります。実際に起きたことなので、そのことを淡々と書いているだけとは思いますが、これは、「Winny事件」の背景だと思うのですよね。それに、書きすぎていると思います。

面白いと思うところ

 上のあらすじを読むと分かりますが、なかなかすごいコトが起きていました。当時、大学生で、もう飽きたおもちゃみたいに、事の顛末には興味はなかったですが、今なら分かります。包丁を作った職人が、ある殺人事件の重要参考人として罪に問われたのですよ! お前がこんな包丁など作るからだ。それは、殺人ほう助だ! みたいにです。ということの主題が、面白い。そしてありがたいことに、このWinny事件について何が問題なのか素人が観ても分かるようにきちんと弁護士さんが作中で解説してくれます。こんな事件だったんだ。と勉強にもなりました。
 また、観て頂ければすぐに分かるのですが、明らかな昭和感があります。ですが、たった20年前のことなのです。こんなことが、許されるはずはない……まさに社会派! ぱっと浮かんだのは、『それでもボクはやっていない』『新聞記者』、この2つの映画です。勝てない勝負だし、闇ですよね。考えさせられる映画でもあります。

 あとは東出昌大の怪演! か、憑依ですね。私は金子氏という実物を知らないのですが、きっと金子さんって方は、かなり個性的なのでしょうね。それを、見事に演じています。逆に言えば、あれがまるっきり脚色だというのなら、やりすぎ。あれは、かなり寄せているのでしょう。これこそ、実際の金子氏を知っていれば、面白さはより一層なのだと思いました。
 『コンフィデンスマン』のボクちゃん役もかなりハマっていました。映画を観るにあたり、なんの違和感も持たない演技を見せてくれます。本当、いい役者です。

こういう人にお勧め

 風化させたらいけない、忘れちゃいけない過去が、歴史があるはずです。この映画はたぶん、そのような一つだと思います。自らの知識の一つとして頭に入れておくにはすごくいい映画です。裁判の論点、判決もさることながら、当時の警察の杜撰さや、天才プログラマー金子氏がどういう人物だったのか、を知ることができます。
 新しい何かを知りたい。そんな欲求のある方には是非見ていただきたい作品です。

ここから読んだ人向けの話

考察

 そもそも、本当に? という、少し穿った見方をしてしまいました。要は、故意なのでは? という可能性を探ってしまいました。本当に、大義があったのでしょうか? 私はね、そうは思えませんでした。悪だくみとまでは言えないでしょうが、いたずら心があったと思います。
 金子氏がプログラミングの天才であることに、疑いの余地はありません。ですが、あまりに世間知らず、想像力が欠如しているのだと思いました。このソフトのリリースに伴い、いったいどのような弊害が生じるのか、分からなかったのでしょうか?
 私は……分かっていたと思いますよ。ただ、ここまで大ごとになるとは想像できなかった。というのが本音だと思いましたね。そもそもですよ、リリースした場所は、あの「2ちゃんねる」ですよ。そういう時代だったのかもしれませんが、あそこに住まう住人に、それを預けてはいけなかったのだと思います。という、前提を覆すようなことから、考察ははじまります。

 大事なことは、使い方です。リテラシー。悪いのは、上手に使えなかった側にあります。この「Winny」内で情報漏えい系ウィルスが流行、感染し、意図しないデータが流出したことで警察や自衛隊の内部情報、企業の顧客情報や個人所有のファイルなどがインターネット上に漏えいしました。警察の面子も、潰れました。そして何がダサいと言いますとね、インターネット上に漏えいしたファイルは、性質上、削除困難であることから、当時の阿部官房長官は会見を開き「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、パソコンでWinnyを使わないことです。」と呼びかけたところです。政府の発言としては、それも仕方のないコトでしょうが、どうにも納得ができません。
 あと5分、たった2か所のプログラミングのソースを変更すれば是正できます。と金子氏は言っていました。たしかに、あの状態の彼に、もう一度「Winny」に触れさせることはできないことでしょうが、なんとかならなかったのでしょうか……この点は建設的ではなかったと思います。あれは脚色ですかね。

 とかとか、書きましたが結論としては、「まだ、早かった」に尽きます。 まだリテラシーという概念も、言葉もなかったような時代です。まだ、有用に使えなかった。だけど、分からなかったのは、あの「Winny」の有効活用ってなんでしょう? 大容量データの送受信?? ちょっとこの点は分かりませんでした。使い手には都合がいいですが、明らかに著作権という概念を無視するような使われ方が蔓延することぐらいしか、私には想像ができませんでした。

警察の裏金事件について

 金子氏の話と並行して、ある警察組織の闇を暴こうと奮闘する一人の警察官、仙波氏(吉岡秀隆)の話があります。私はこれを、これは、伝えなければいけず、言い換えれば脚色だったのだと思いました。これは闇に対する、一縷の望み、光なのだと私は考察しました。金子氏を訴える警察という、それは都合の悪いこと、面子を保つためにした、明らかにおかしな行為(=闇)です。でも、警察はそれだけじゃない。腐った組織の中にも正義感(=光)に燃える警察はいるのだ、ということを描かざるを得なかったのだと思いました。

都市伝説として

 「Winny」の技術の柱はP2P技術です。あのビットコインにも、この技術が使われています。金子氏は、いち早く、この技術を応用しました。ビットコインの開発者は「サトシ・ナカモト」だと言われていますよね。これは、ペンネーム。サトシ・ナカモトなる者が活動していたのは2010年頃まででそれ以降は活動が見られず、金子氏が夭折したのは2013年。タイミングはあっています。もしかしたら稀代の天才プログラマーは、今の世の中にも、多大な影響を与えているあのビットコインの開発者なのかもしれません。匿名で、面白半分で、すごい概念を発見したと言って、彼は無邪気にもまた、ネットの海に論文を投げたのかもしれませんね。

 皆さんはどう思いましたか?

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