『ルックバック』紹介及び考察

映画

基本情報

基本情報

 2024年の日本アニメ映画、原作あり。マンガ大賞にも輝き、アニメもヒットした『チェンソーマン』の藤本タツキによる長編読み切り(単行本全1巻)です。監督は押山清高。主演声優は、新しいアイコン、今をときめく河合優実です。そして上映時間は58分! 

 私は劇場で観た口ですが、忘れもしません。料金は一律1700円。上映時間は58分、アニメ、それも映画館で……という、若干の葛藤があったのを、今も、恥ずかしながら覚えています。どこか、コスパが悪いような……そんな邪なこと思ったものでした。ですが、先に観た友人からは、かなり推されました。「絶対に観た方がいい!」その言葉も、よく覚えています。で、観に行ったのが、たぶん7月か8月の頭でした。それで、はっきりと思いました。観てよかった! それからは、私もまだ観ていない友人たちに『ルックバック』を布教していましたww
 
 さて、基本情報では河合優実について書きます。映画『ルックバック』を語る上で、河合優実については欠かせません。まだ知らない人もいるのかもしれません、だから少しだけ、書くことにします。
 河合優実が演じた主人公の声は、若々しく、生き生きと、しかしどこから気だるそうな感じが見事に表現されていて、ひとつの声、というわけではなく、それしかない、というくらい正解でした。これしかない、というくらいに、ハマりまくっています。
 そして彼女は、女優です。声優ではありません。でも、いきなり出てきました。そして、新人賞を総なめにし、最近では、『不適切にもほどがある』でバズる? こんな言葉はあまり使いませんが、それは事実でしたし、なんたって『あんのこと』を観て欲しいです。すごいから。新作『ナミビアの砂漠』は観ていませんが、予告だけで、ヤバそうでした。あと、今の若い人だけにじゃない、彼女は「山口百恵」に似ています。きっとおじさんも好きになります。という、作品の前情報としては、結局なんでもないのだけど、要は、彼女のことも好きだってわけです。『ルックバック』の次は、彼女の出演作を要チェック! 

映画を観る前に

 で、ここまで熱い想いで、ノンストップで書き続けた「基本情報」という枠組みを逸脱した、散文ですが、できれば、これより先は、『ルックバック』観てからにして欲しいです。次項は「簡単なあらすじ」ということで、ここでは公式から抜粋したことを書きます。だけど、それは、まだ観ていないのなら、止めておいて欲しいです。この記事を読んで、まだ映画を観ていないのならば、『ルックバック』は何も知らないで観て欲しい。事前情報は、極力無い方がいいです。
 だから、まだな人は、ここで回れ右。観てきてください。私はここであなたを待っています。きっと、もちろん私のできる限りの範囲でですが、『ルックバック』が良かったら、一緒に語り合いましょう。散々書いて、ここで「良かったら」なんて予防線を張るには理由があります。
 『ルックバック』は、分からない人には、分からない映画です。これは好き嫌いとか、たぶん、そういう話ではなく、分からない人には、ずっと平行線。ただ、刺さるか、刺さらないか。別に、刺さらないことが悪い、とかそんなことは言いません。ただ、私は、『ルックバック』を観て、グッときた人が好き。




簡単なあらすじ

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。

クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。

漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。

しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。

『ルックバック』公式サイトより抜粋

 あらすじはあらすじですが、というか、これはただの入りですね。
 たかが58分のアニメ映画です。前情報なんて不要。ぎゅっとしています。それに、これ以上長くしても、ダメ。濃厚、見逃し厳禁、全部必要。ダレない、強いて私が説明するのなら、こんな感じの映画です。
 
 全ての夢追い人に捧ぐ、密度100%の青春がここにあります。今、一番エモい映画。58分。 どうでしょうか? これ、末尾にタイパ最高、なんて初めは書いていたのですけど、それはそうなのですが、ちょっと作品に失礼だって思って削除しましたww でも、それは口頭で付け足せばいいかな。あとは、結末に色々と文句なんて言わないで、ただ、感じてほしいです。少し尖った言い方をすれば、本来、考察は無用で、「で、いったいどうなったの?」なんて、言ってくる奴は、少し嫌いです。ただ、感じてくれればいいだけです。

HARU
HARU

映画『カランコエの花』のような濃縮具合

PENくん
PENくん

あっという間の58分だったね。

面白いと思うところ

 全部。とか書いちゃうと、悪いですね。でもね、全編を通して、ほんとそう。逆に言えば、無駄がありません。これはね、ヤラレタ! とも感情をあてるのが近いですね。だけど、漠然、抽象的になっちゃうんですよ。ようは、「どこが?」というQに、いいAが浮かびません。
 こういうのは、ある意味、山場がない、とも言えるのかもしれませんし……なんだそれって、思うでしょう。ここはまだ、観ていない人を想定しています。だから、あまり内容について深く記載することは避けるのですが、あっという間の58分です。シーンのすべてに意味が込められていますし、細かい描写にもハッと驚くような仕掛けがあったりします。

 既に書きましたが、余すことなく、密度100%の映画なわけで、たとえば他の映画にはある冗長性(もっと簡単に言えば「遊び」ですかね)が、『ルックバック』にはありません、だから、「えっ、あっそういうことか、挫折か、って、それは分かるけど、もっと見せればいいのに、こんな簡単にしちゃうんだ」みたいに通り過ぎますww主人公の挫折をね、まさにその瞬間を描いているのだけど、それが凄い。そのスイッチも、あの声も、またプロセスも、ちゃんと描いて、ちゃんと丁寧。
 そして「夢」。ほんとう、観て下さい! 思い出しますよ。何かに夢中だった時のことを、とにかくね、くすぐります。これは本当に、くすぐったいくらいに感じる人もいるかもしれませんが、違います! 真っ直ぐなのです。「挫折」から、報われるシーンがあります。とか、違う世界線でも、やっぱりそうだった、そうなんだよなって、というシーンがあります。キュンキュン、でもね、ちゃんと泥臭くもあります。

こういう人にお勧め

 ほぼ全ての人。キモはね「ほぼ」の部分ですね。大抵の人には、刺さるはずです。ただ、まったくわからない人も、一定数いると思います。これはね、リテラシーのあるなし、とかではなくて、分かり合えないだけ。「だから?」とか、きっとそういう感想を持つのでしょう。
 でも、観て欲しいです。きっと、あの人には響かないだろうな、とか、事前に分かるかもしれません。でも、内側では分からない。それは本人さえも知らない、知らなかった、何かをくすぐるかもしれません。たとえば、近いのは『スタンド・バイ・ミー』、名作ですよね。そう、この『ルックバック』って、誰もが通ったことだと思うのですよね。だから、アニメだからとか、なんか絵が苦手だとか、いやいや、そんなの関係ない。ただ、観て欲しい。オススメです。全ての人に。あなたにも、感じて欲しい。

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ここから読んだ人向けの話

違う世界線を描いた理由は?

 「あたしのせい」「京本死んだの、私のせい」からの違う世界線を描いた意味は?
 どうでしょうかね。部屋から出したことで、京本を殺したって? そんな、通常では考えられないくらいの自意識過剰が藤野にはみられます。冷静な判断ができなくなっていましたね。当然、分かっていると思いますが、そんなことはありませんよね。2人で夢を追ったのは、あの日々は何にも変えられない掛け替えのない時間でした。それは、間違いありません。ありませんよね、憎いくらい上手に、描いていましたよね。なので、あのセリフの意味をあまり深堀する気はありません。では、なぜ、あの違う世界線を描いたのでしょうか?

 京本は、部屋を出なくても、美大に進みました。そして、事件を免れる、と言う世界線です。そしてここで面白いと思ったのは、けっきょく藤野は諦めきれなかったのか、漫画を最近描き始めたと言うことです。私はね、結局2人は交わることを示唆しているのだと思いました。運命。ただ、死ななかった。かもしれません。どこか悲しい推察に、藤野が夢を叶えること(成功)の代償のようにして、京本の死があるような気がしてしまいました。それでは、あの世界線では、2人はまたも運命的に交わりますが、漫画家になる夢は叶えられたのでしょうか?

 私は、ダメだと思います。だからこそ、違う世界線を描いたのだと思いました。これは、皮肉ですかね。彼女たちの、夢の成功のカギは、全てあのタイミングだったのです。あの日、卒業式の後、藤野と京本が出会ったことで、だからこそ、叶った。これはどこか残酷なメッセージだとさえ思いましたね。

このタイトルの本意は?

 違う世界線で、藤野は飛び蹴りで京本のピンチを助けます。ただ、着地の際に足を骨折したという設定でした。ですが、たぶんそれはない。そうであるのなら、あの反撃はできないだろう。ではなぜ、そういうことにしたのでしょうか。
 違う世界線(ここは難しい、どっちの世界かと言うと、実に微妙)にて、京本が描いた四コマ漫画では、飛び蹴りの後、藤野は歩いている。ただし、背中にツルハシww と、いいですか、笑ってはいけません。ここには考察があります。これは、ギャグですが、ならそっちの世界線では藤野の番なのか、なんて、思っちゃいました。それも、そうですよね、あの飛び蹴りはあまりにもマンガですよね。なんだクソ! そっちはそっちで藤野が死ぬのか、残酷な運命過ぎる……という見方をしました。
 というよりも、ここ、上記のことを考えて、全部騙されていたのかもしれないと、思いました。逆。視点は、ほんとうの主役は京本。そっちの世界線が正で、私達が観た方がこそが、じゃなかった方。京本は、藤野先生を殺したくなかった。だから、卒業証書を藤野が持ってきたあの日、部屋を出た。

 LOOK BACK。句動詞です。振り返る。回想する。という意味のほか、動作的な振り向くという意味も持ちます。また、特徴的なことに後悔する。という意味も持ち合わせています。ほら、なんだか辻褄が合うような気がしませんか。私たちが観たのは、全部京本が理想とした、世界線。

小ネタについて(部屋の壁紙)

 藤野の部屋の壁紙は、歳月の経過ととも変化していきます。すべてを確認できたわけではないですが、印象的だったのは、映画『バタフライエフェクト』の壁紙が貼ってあるのが確認できます。バタフライエフェクトはごく小さな差違が、将来的に予測不能な大きな違いを生じるというカオス理論を効果的に取り入れた異色サスペンス映画です。愛する者を救うため、過去を書き換えようとする映画となっており、これは上記考察した世界線の根拠となっています。
 そのほか、壁紙では『時をかける少年』、『ビックウナギ』と続きます。ビックウナギは字のフォント的にビックフィッシュで間違いないでしょう。最後、ビックウナギの後にベンチに座る女の子の壁紙が半分だけ映ります。私はこれが『フォレスト・ガンプ』のパロディだと思うんですが、どうですかね。小学校の教室に映った「一期一会」の文字が妙に頭に残ってまして。
 時をかける少女も、タイムリープして人生をやり直す話だったり、ビックフィッシュ、フォレスト・ガンプは嘘みたいな夢物語。意図的に描かれたものとして間違いありません。

小ネタについて(シャークキックの巻数)

 作中、シャークキックの最新は11巻。漫画を読み返すシーンも作中に描かれており、12巻に続くところを映画では描いています。原作藤本タツキの代表作「チェンソーマン」の第1部完結は同じく11巻です。藤野が最後、京本の部屋の前でジャンプに挟まった白紙の4コマ漫画を見つけますが、その挟まっていたページは「チェンソーマン」のワンシーンでしたね。シャークキックの発巻数なんて、いくらでも選べる中あえて11巻としているところは、この映画がちょうど1部完結ってところを意図していたり、、、なんて。

最後のシーンと語りたいこと

 あの時、藤野はさ、いとも簡単に不法侵入をやってのけます。そして京本の部屋の窓は開いているという怪奇がありました。おかしいですよね。でも、本当に全部作り物だったら? 京本が、私が死んで、藤野ちゃんの代わりに、私が死んで、藤野ちゃんが成功すればいい、という視点から描かれた世界(京本視点の、作り物)なら、辻褄が合います。

 どうでしょうかね。もう、やめておきましょうか。最後の、回想。中高の6年が、2人の青春が全部、詰まっている。最高でしたね。最後にこんなことを言うのは、少しフェアじゃないですが、私が書きたかったことは考察ではなく、それは、どう思った? でもなくて、「いやあ、よかったね」と、共感したかっただけ。だからね、別に、具体にどこの、どのへんが、とか、あのセリフがね、ということじゃなく(通常の? というのも変ですが、そういう映画であれば、それらの話には価値があるし、楽しいとも思います)。なんでか、そんなことで喧嘩みたいなこともしたくない。「いい映画だったね。」それだけでいいのです。

 皆さんはどう思いましたか?

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