基本情報
著者は北川恵海。2015年の作品で、本作がデビュー作です。ジャンルは現代小説・ヒューマンドラマ。そして特徴あることとして、メディアワークス文庫(KADOKAWA)からの出版です。というのも、私が(勝手に)ラノベ!? と、犬猿してきた類……だからです。と、思っていたのですが、少し調べればちょっと違う。ふむふむ、「ライト文芸」だという。
私は(これこそ勝手に)毛嫌いし、これまでずっと逃げてきました(感覚は、映画好きを自称し、「アニメ」を認めず、洋画を観るならば絶対に字幕じゃなければならない…… そんな、一時の私の学生時代にあった偏見でした。が、今ならはっきり分かります。本質は別)。が、ふとこれこそ今本じゃないだろうかと思い、読んだ訳です。そしたらなんと読みやすい。そして、この軽快なタイトルに隠れた、内なる炎とでも訳しましょうかね、とにかくシビレました。この本は、やはり今本。しかも時代の先駆けだった。約10年前の作品ですが、今、今こそ読まれるべき本です。本作の読了目安時間は、たった2時間!
忙しいあなたも、捻出して下さい。それだけの価値があります。
社会人の「心の限界」と「再生」を描き、多くの読者の共感を呼んだ話題作です。福士蒼汰さんの主演で、映画化もされています。

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』って映画もあったね。

みんなには、そもそも仕事で限界なんて感じてほしくないね。
簡単なあらすじ

ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで? 気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは三年前に激務で自殺した男のニュースだった――。スカッとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉受賞作。
北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』メディアワークス文庫 裏表紙より
面白いと思うところ
この物語の面白さは、社会のリアルな痛みと、そこに差し込む優しさのコントラストにあります。主人公・青山隆は、ブラック企業で働き、精神的に追い詰められていた青年。そんな彼が、駅のホームで出会った陽気な男・ヤマモトに救われる――この出会いから物語は始まります。
ヤマモトの明るさ、自由さ、そして「生きることはもっと楽でいい」という価値観が、隆に少しずつ生きる力を取り戻させる。そして中盤からの「ヤマモトの正体」が明かされる展開は、読者の心を強く揺さぶります。
この「優しさの真相」が、物語を単なる励まし小説では終わらせません。
本作『ちょっと今から仕事やめてくる』から名言・印象的なセリフまとめをお届けします。
「生きてるだけで丸儲けやで」
隆が過労と絶望のなかで自殺を考えていたとき、ヤマモトが明るく言い放つ言葉。関西弁の軽やかさに反して、この言葉の根はとても深い。「生きている」ことを当たり前ではなく、「奇跡」として肯定する。この一言が物語のすべての出発点です。
このセリフは本作のテーマ「命の再発見」を象徴しています。社会の中で「生きる意味」を見失った人に、ヤマモトは「まず、生きていいんだ」と語りかけます。そう言えばこれ、さんまさんが愛娘につけた「IMARU」と同じですね!(余談)
「逃げたってええやん。死ぬよりずっとマシやで」
追い詰められた隆に対して、ヤマモトが静かに告げる場面。「逃げる」ことが恥ではなく、生きるための正しい選択であるという逆転のメッセージ。この言葉に涙した読者も多いでしょう。
社会的責任や努力の美徳を重んじる日本社会で、「逃げることの勇気」を肯定するのは、とても本質的で、そして優しい。「やめる勇気」を与える一言です。
「頑張らんでもええ。笑って生きてたらそれでええやん」
隆が「自分には価値がない」と落ち込む場面で出てくる言葉。努力や成果で自分の存在を測る癖を、優しく否定してくれます。
現代社会では「頑張る」ことが義務になりがちですが、この言葉はその呪縛を解き放つ。
「頑張らなくても、あなたはすでに価値がある」そんなメッセージを読者に届けています。
「あんたがいなくなったら、悲しむ人がいるって、忘れんといてな」
このセリフは、ヤマモトの正体を知ったあとに読み返すと、まったく違う重みを持ちます。隆の存在を心から肯定し、誰かの中で生き続けるという希望を示しています。孤独に陥ると、人は「自分は誰にも必要とされていない」と思いがちです。でもこの一言は、「あなたの存在は、誰かの世界を照らしている」と教えてくれる。本作で最も静かで、最も温かい言葉のひとつです。
「仕事なんてな、替えはいくらでもあるけど、あんたは替えがきかへん」
この言葉は、隆だけでなく、現代を生きるすべての社会人へのメッセージ。「会社」ではなく「自分」を守ることが、人生でいちばん大切だと教えてくれます。
働くことは人生の一部であって、すべてではない。「自分という存在の尊さ」を取り戻す一言です。
「やめるって、負けることやない。生き直すことや」
クライマックスに近い場面で放たれる言葉。「やめる」という選択を、「逃避」ではなく「再出発」として描く本作の核心。
このセリフがあるからこそ、タイトルの「仕事やめてくる」は軽く響いても、実際には「生きるための宣言」として読めるようになります。
「やめる」=「始める」——この逆転が、本作の最大の魅力です。
これらは全部、ヤマモトの言葉です。言葉ってすごいですよね。どれも「説教」ではなく「寄り添い」です。彼のセリフの特徴は、軽く見えて重く、ふざけて見えて真剣。それはきっと、著者の北川自身が「誰かを救いたい」という思いで書いたからでしょう。
読むたびに、「今日をもう少し生きてみようかな」と思わせてくれる。そんなやさしい言葉たちが、この小説を支えています。
こういう人にオススメ
仕事に疲れている人、社会の中で「自分が消えていく」ような感覚を持っている人
就職や転職を控え、「働くとは何か」を考えたい学生や若手社会人
「誰かの優しさに救われた経験」がある人
特に、完璧じゃなくていい、自分を大切にしていいというメッセージが、読後にじんわりと残ります。現代の働き方に疑問を感じている人にこそ読んでほしい作品です。あとは短さと読みやすさに優位性があります。たった2時間! そして読みやすい!
また作中に出てくる「一週間の歌」は痛烈です。刺さる人には、グサリ。何となく想像できるでしょうかね。ネガティブな歌ですが、私は上記にあげた「いい言葉」よりも、たまらなかった。
これは、ココではあえて書きません。文庫本の45ページです!
読んだ人向け
「ヤマモト」という存在
ヤマモトは、現実と幻想のあいだに立つ存在です。彼は隆の「理想の他者」であり、「かつての自分を取り戻すための化身」でもある。物語が進むにつれ、ヤマモトが実在するのかどうかは重要ではなくなり、「自分を許し、もう一度生き直すための希望」として描かれています。
「仕事」と「生きること」の線引き
この作品は、「仕事をやめる」ことがゴールではありません。むしろ、「自分を犠牲にしてまで働くことは、生きることとは違う」という気づきを描いています。タイトルの軽やかさに反して、テーマはとても深く、現代社会に対する優しい問いかけです。
「やめる」という勇気
「逃げる」「やめる」という言葉は、否定的に使われがちですが、この小説はそれを「生きるための選択」として肯定します。誰かに「やめてもいいんだよ」と言ってもらえたら、きっと多くの人が救われる——そんな物語です。
まとめ
『ちょっと今から仕事やめてくる』は、疲れた心にそっと寄り添い、「生きること」を見つめ直させてくれる現代の救済譚です。読む人によって、「ヤマモト」の姿は違って見えるでしょう。でもその優しさの根っこは、誰の中にもきっとある。そんな希望を信じさせてくれる一冊です。
皆さんはどう思いましたか?
(本編外1)『ちょっと今から仕事やめてくる』が語る「退職代行の時代」の希望
と、ここからはフィクションを超えた真面目な話を徒然。とても大真面目な話。
本作の『ちょっと今から仕事やめてくる』は、出版から10年近くたった今も、共感の声が絶えない作品です。ブラック企業で心をすり減らす青年・青山隆と、彼を救う謎の男・ヤマモト。この物語が描くのは、「仕事をやめる」という行為の再定義です。
そしてそのテーマは、いまや「退職代行」という現実のサービスにまで繋がっています。
「やめる」は逃げじゃない——変わったのは時代のほう
2010年代前半、まだ「退職」は「根性がない」と見られることが多かった。会社を辞める=負け、という空気が社会に根強くありました。そんな時代にこの小説は、明確に言ったのです。「やめるって、負けることやない。生き直すことや」この一言は、いま読むとまるで退職代行のスローガンのようですね。「会社より自分を大事にしていい」と堂々と肯定した作品は、当時としてはかなり先進的でした。
退職代行という「現代のヤマモト」
2020年代に入ると、退職代行サービスの利用者は急増しました。厚生労働省の調査でも、20〜30代の労働者の3人に1人が転職・退職を検討しているということ。冷静に見れば、退職代行とは「ヤマモトの現代版」です。会社と自分のあいだに立ち、「逃げてもいい」「あなたの命の方が大事だ」と言ってくれる存在。違うのは、現実のヤマモトは電話一本で現れること。心が限界を迎えた人にとって、それは確かに「救いの手」なのです。
「仕事やめる」が特別ではない社会へ
かつて「仕事をやめる」は人生の大事件でした。では、いまはどうでしょう。SNSでは「退職しました!」という投稿に、祝福のコメントが並ぶとか、「お疲れさま」「次の人生がんばれ」——そう言える社会に、少しずつ変わってきました。この変化の背景には、本作のような「やめる=生きる」という価値観の浸透があります。ヤマモトの言葉が、ようやく社会全体の声になったのかもしれません。
「退職」は終わりじゃなく、物語のはじまり
小説のラストで隆は、仕事をやめ、人生を立て直します。その姿は、逃げではなく「生き直し」です。退職代行を利用する人々もまた、同じように自分の人生を取り戻す旅をしています。「もう無理だ」と感じたとき、『ちょっと今から仕事やめてくる』は今でも静かに背中を押してくれます。
まとめ
『ちょっと今から仕事やめてくる』が描いた「やめる勇気」は、現代では「退職代行」や「キャリアチェンジ」という形で現実化しました。10年前のフィクションが、いまや社会のリアルになりました。本作は、単なる癒し小説ではなく、時代の変化を先取りした「働き方の物語」なのです。
(本編外2)小澤亜希子『退職代行』と読み解く「やめる」を語る二つの視点(フィクションとリアル)
『ちょっと今から仕事やめてくる』は、社会人の苦悩・再生を描いたフィクションとして、働くこと・辞めることについて読者に問いかけます。一方、 小澤の『退職代行』は、実務家として「辞められない」職場、そして「辞める手段としての退職代行サービス」の実態を明らかにするノンフィクションです。
この2冊を並べて読むことで、次のような視点が浮かび上がってきます。
フィクションが描く「やめる勇気」「再生の希望」と、リアルが描く「辞められない構造」「代行サービスという選択肢」
「辞める=逃げ」ではなく「生きるための選択」という共通テーマ
社会としての働き方・辞め方の変化の兆し
『退職代行』の主要な内容を簡潔に整理します。
働き手が「辞めたくても辞められない」職場環境(長時間労働、人手不足、ハラスメントなど)を多数の実例を交えて紹介。
「退職代行サービスとは何か」「非弁業者との違い」「サービスを使うべきケース・注意すべきケース」を具体的に論じています。
最終章では「辞めること」「働くこと」「日々の幸せをどう捉えるか」という、生き方そのものについても著者の思いが語られています。
この中で特に注目したいのが、著者の小澤が「退職代行」を最後の砦と位置づけていること。彼女は「誰もが積極的に使うべきサービスだとは思っていない」と明言していますが、「どうしようもなくなったときの救済の選択肢」としてその意義を認めています。
そう、『退職代行』は「退職のすすめ」ではなく、まして「退職代行利用のすすめ」でもありません。また、本書の後半部ラスト20ページくらい、最後の第5章「幸せになる生き方」は、ほんとに畳みかけるようによかったです。もうこの部分では退職代行うんぬんの話なんてしておらず、ただ、飾らずに、自身の経験から言えることを、熱い想いで綴っています。ここは打たれます。

画像のとおりですが、読みながら、付箋はちょっとだけ貼りました。紹介します。
・「サーカスのゾウ」という話
サーカス団で飼われているゾウは、幼い頃から鎖で繋がれています。幼い頃は力が弱いので、何度鎖を切ろうとしても、切ることができない。そのうちに体が大きくなって、鎖を切る力が備わっても、鎖を切って逃げようとしない。なぜなら、幼い頃からの刷り込みにより、「どうせ逃げられない」と思い込んでいるからなのです。
これ、分かり過ぎるくらい分かります! 私も前職で、それに近い感覚が確実にありました。サービス残業って、もう感覚バグっていますよね(どれも全てだとはいいませんよ)。
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