基本情報
2025年7月、ダガー賞受賞。日本人としては史上初の快挙で、アジア圏としても異例の受賞。世界中のミステリーファンが注目……。あれ? なんか既視感がある。そうだコレ、『三体』だ! 中国人SF作家「劉慈欣」のヒューゴー賞※と同じ現象だ! 流行った、そして気になって読んで、SFにハマったんだ……思い出した。経験から学んだ、こういう売れ方をするのは、マジのやつ。ということで、ずっと気になっていた、だけど表紙がなかなかにインパクトあって、でもなあ、きっと面白いやつに違いない……ニュースでもやるくらい、この快挙はけっこう凄いコトらしい。知らない作者だなあ、が、フックは強烈、読んでみました。
※ざっくり言えば超歴史あるアメリカのSF文学賞、英語以外の言語から英訳された小説の受賞など、これまでなし。だから『三体』の衝撃は、すごかった。しかも中国!

ということで、「ダガー賞受賞作」として本作を手に取りましたが、読み終えたあとに残ったのは、単なる受賞作を読んだという満足感ではありませんでした。こいつは、想像以上に危険な小説でした。
そこにあったのは、救いのない暴力と、名前を与えられない関係性が静かに心に沈殿していく感覚です。
王谷晶の『ババヤガの夜』は、バイオレンス小説でありながら、同時に非常に冷静で、計算された物語でもあります。本作がなぜ国際的な評価を受けたのか、その理由を探りながら紹介していきます。
著者の王谷晶さんは、日本のクライム小説界において、暴力と人間関係を極端なまでに切り詰めて描く作風で知られているそうです。感情の説明を最小限に抑え、行為そのものによって人物像を浮かび上がらせる手法を用いるそうです。これ、本作でも徹底されていました。
本作が受賞したダガー賞は、イギリスの犯罪作家協会(CWA)が主催する、世界的に権威のあるミステリー/クライム文学賞です。特に翻訳部門は、「英語圏の読者に通用するクライム小説かどうか」という厳しい基準で評価されるため、日本作品が受賞すること自体が非常に稀です。
刊行は2020年。ジャンルはクライム/ノワール/バイオレンス 読了目安時間2時間半。あと、これは先の『三体』とも同じですが、さぞ本人もビックリしたでしょうね。本作は日本で刊行から5年。『三体』は刊行から約10年。作者にとって著作物は子供のようだとしてもですね、家を出て、いつの間にか立派になってえ、みたいな感情があったりするかもしれませんね(さすがに忘れたってことはないと思いますが、きっと今回の受賞を聞いてからは、間違いなく再読したでしょうねww)。

今だけ? 特別カバーのものと並べてみた。

見開き。これ、あえてブックカバーとかしないで読んでみたいよね。

カバーイラストは山田克也先生だね!

べらぼうにかっけーな!!
そもそもババヤガってなによ
ババヤガって検索すると「バーバ・ヤーガ」で出てきます。スラブの民話に出てくる、いわゆる“森に住む魔女”みたいな存在です。
見た目はかなりインパクト強めで、骨と皮だけみたいに痩せこけた妖婆。脚なんてほぼ骨だけ。そんな姿で森の奥の一軒家に住んでいるんですが、その家がまた独特で、なんと“鶏の足”の上に建っている小屋なんです。庭にも家の中にも人間の骸骨が飾られているという、なかなかのホラー仕様。
普段は寝そべって過ごしていて、移動するときは細長い臼に乗るスタイル。右手の杵で臼をせかすと、ふわっと少し浮いて、底を引きずりながら進むんだとか。左手にはほうきを持っていて、通った跡をサッと消すという徹底ぶり。
日本語では「魔女」「魔女ばあさん」「山姥」「鬼婆」など、いろんな訳がされてきましたが、最近はムソルグスキーの『展覧会の絵』の副題で知られる“バーバ・ヤーガ”表記がよく使われています。ただ、実際のスラヴ系の言語ではこういう言い方はしなくて、ロシア語の発音に近いのは“バーバヤガー”のようです。
民話に出てくるときは、だいたい敵役。子どもをさらって食べちゃう、あの典型的なパターンです。だから多くの物語では、彼女に頼るのは危険な行為として描かれます。でも面白いのは、ババヤガが主人公を助ける話もちゃんとあること。礼儀正しさや節度、心の清らかさを示せば、彼女は善玉として振る舞うんです。単なる“悪役”ではなく、試練を与える存在として描かれることも多いらしい。

簡単なあらすじ
お嬢さん、18かそこらで、なんでそんなに悲しく笑う? 暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會にその喧嘩の腕を買われる。会長が溺愛する一人娘の運転手兼護衛を任されるが、彼女を過酷な運命に縛りつける数々の秘密を知り――。血が逆流するような描写と大胆な仕掛けで魅せる不世出のシスター・バイオレンスアクション!
◎解説=深町秋生
王谷晶『ババヤガの夜』河出文庫 裏表紙より
面白いところ
『ババヤガの夜』の最大の特徴は、暴力が物語の装飾ではなく、登場人物同士の唯一のコミュニケーション手段として描かれている点です。
殴る、縛る、支配する。
それらの行為は快楽やカタルシスをもたらすものではなく、むしろ関係性を成立させるための不器用な言語として機能しています。そのため読者は、暴力を「見る」ことはできても、簡単に評価することはできません。
また、女性同士の関係性が、友情や連帯といった分かりやすい物語に回収されない点も印象的です。そこには支配と依存、保護と破壊が入り混じり、常に立場が反転する不安定さがあります。この緊張感が、物語全体を強く引き締めています。
こういう人にオススメ
本作をオススメしたいのは、強い読書体験を求めている方です。『ババヤガの夜』は、読みやすさや共感を重視した作品ではありません。むしろ、読者を不安定な位置に立たせたまま、最後まで突き放します。しかしその冷たさこそが、本作の誠実さでもあります。
ダガー賞をきっかけに手に取った方にも、日本のクライム小説をあまり読まない方にも、本作は「海外で評価された日本作品」という枠を超えて、世界水準のノワール小説として推薦できます。
……ですが、私も誠実に、ちゃんと書きます。この小説、危険です。逆に「安心できる結末」「共感しやすい主人公」「倫理的な着地点」などを求める人には、かなりキツいです。
読んだ人向け
なぜこの暴力は、最後まで読めてしまうのか
本作の暴力描写は過激ですが、読者は途中で投げ出すことなく、最後まで連れていかれます。その理由は、暴力が快楽や刺激として描かれていないからです。
言葉で説明されない感情、整理されない関係性。それらが、暴力という行為に変換されているため、読者はそれを「理解」することはできなくても、「受け取る」ことはできます。
暴力が心理描写の代替になっている点こそ、本作の異様さであり、完成度の高さです。善悪や被害/加害の境界が最後まで固定されない点も重要です。読者は安心できる倫理的立場を与えられず、ただ出来事を見届けるしかありません。この不安定さが、読後に強い印象を残します。
ダガー賞はこの作品の「何」を評価したのか
ダガー賞が評価したのは、暴力の強度そのものではなく、暴力を通して倫理を描く構造だと考えられます。
本作は、日本的な情緒や説明的な心理描写に依存せず、都市の暴力と歪んだ関係性を極めて普遍的な形で提示しています。異文化的な装飾やエキゾチシズムを売りにせず、世界のクライム文学と同じ土俵で勝負している点が、国際的な評価につながったのでしょう。
タイトルの意味――本作における「ババヤガ」とは何か
基本情報でも書きましたが、「ババヤガ」とは、スラヴ民話に登場する魔女的存在で、善と悪、保護と破壊の両面を併せ持つ存在です。完全な悪ではなく、助言者にも破壊者にもなりうる、その曖昧さが特徴です。
本作において「ババヤガ」は、特定の人物を指すというよりも、登場人物同士の関係性そのものを象徴しているように思えます。互いを縛り、傷つけ、離れられなくなった状態そのものが怪物化していく。その過程を描いた物語が、『ババヤガの夜』なのです。
夜という言葉が示すとおり、本作では判断の境界が曖昧になり、登場人物たちは次第に後戻りできない場所へと進んでいきます。他にもいいなって思ったのは、「ババヤガ」という名前を借りながら、神話を説明しすぎない。その距離感が、この小説の冷たさとよく似合っています。
映画化に期待大
読みながらずっと思っていた。これ、映画化するわ。もちろんダガー賞って武器はあるけど、そうじゃなくてもこれを翻訳した(外国にもっていった)人は、分かっていたのでしょう。日本じゃないところで、ゴリゴリのバイオレンスで、映画化したい監督がいるはずだって。極道の話なんだ、きっと日本語のままにする。怖いだろうなあ。組長内樹と拷問宇田川ね、さすがに吐き気したよね。実写で見たいような、見たくないような……
以下は、この小説の良さ(面白いところ)と重複するかもしれませんが、書きたい。
① バイオレンスが「説明」ではなく「体感」
この小説の暴力は、
・カッコよくない
・爽快でもない
・倫理的な逃げ道がない
だからこそ、読む側に身体感覚として残ります。これは映像化と相性がいい。むしろ、映像にしたら逃げ場がなくなるタイプ。海外ノワール映画が好むのは、「暴力が物語を前に進める」のではなく「暴力そのものが物語である」作品。そして、『ババヤガの夜』は完全に後者。
② 女性同士の関係性が“記号”になっていない
ここ、かなり重要。海外で日本作品が映画化されるとき、
・フェム・ファタール
・被害者
・復讐者
といった分かりやすい役割に回収されがちだと思うのですが、本作の女性たちはどれにも綺麗に収まらない。
支配/被支配
保護/被保護
欲望/依存
それが常に反転し続ける。この「関係性の不安定さ」は、今の海外映画が一番欲しがっているテーマなんじゃないのでしょうか。
③ 「日本的エキゾチシズム」を安易に売らない
神話的なタイトル「ババヤガ」に反して、この作品は民俗や伝奇に寄りかからない。
だからこそ海外では、
・アジア的神秘
・異文化ファンタジー
として消費されず、冷酷な都市ノワールとして読める。これって、映画化する側からするとめちゃくちゃありがたい。……のではないでしょうかね。
皆さんはどう思いましたか? 映画化に期待しましょう!
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