基本情報
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2017年のホラー・ミステリー洋画、監督はセルヒオ・G・サンチェス。上映時間は110分。キャストに、皆さんが知るような有名人はいません。ちょっとマイナーな、まさに掘り出し物だと自負しています。それほど昔の映画でもありません。
キャストの話ですが、誰もが知っているようなスーパースターはいませんでした。と言うだけで、かつ、まだと言った注釈が必要。若手が凄い! まずここ2人の俳優について、紹介します。
ひとり目はアリー役の「アニャ・テイラー=ジョイ」。ふたり目はジェーン役の「ミア・ゴス」。この2人が本当によくって、もちろん主演のジャック役の「ジョージ・マッケイ」もいい。彼の、色白で、いい細マッチョ具合、タンクトップだからこそ分かる、血管が浮かんだ上腕二頭筋から目が離せない! あと、眼ね。ほんと、外国人さんの眼って素敵ですよね。と、まだ素晴らしい俳優はいますが、このくらいにします(「アニャ・テイラー=ジョイ」と「ミア・ゴス」について、よくって、しか書いていないww が、この2人については別の出演作を調べて追ってみたいと思います。その時にでも、改めて紹介します。でもね、くどいだろうけど、ほんと、いい役者。というか好き)。
で、監督は? 「セルヒオ・G・サンチェス」とは……ほとんど情報がありません! (日本語)ウィキはなし、監督作品は本作以外になし! ただ脚本としては本作(本作は監督・脚本に携わっている)以外に3作あるそうです。謎!
いいね、いいよ! もし、全然違うところからリーチした人がこの記事を読んでいてくれたら嬉しい。観る価値がある映画です。これから書くことは、個人的な価値観の中である指標です。映画館に行く、レンタルしてまで観る価値がある、映画です。サブスクで観られる範囲でしか、映画を探さなくなった。どうしてって? だってそうでしょう? わざわざですよ。他に、溢れているっていうのに、そこまではしない。でもね、そこまでしてもいい映画があります。実際私も、今回は久しぶりTSUTAYAさんにお世話になりました。面白いものですよね、3年も前なら、借りに行っていたし、映画館にもよく行っていました。でも、最近は全然。これはね、言い訳じゃないよ、そこまでしたいと思わなかっただけ。だけど、『マロ―ボーン家の掟』には価値がある。観る価値がある。私はそう思う。
さて、カッコイイこと言った後に(言ったつもりww)、やっとことさ本作の輪郭でも少しなぞることにしよう。

※公式予告 可愛いミア・ゴスが絶叫
こんな感じなので、ホラー映画です。「怖いの?」と言われれば、「ドキドキはする」と答えます。でも、それでもこの映画はね「ミステリー」。まだ観ていない人は、決して最後の考察のところは読んではいけない。台無しになる。とか、こんなことを書くのもダメな気もしますが、とにかくそれだけは守って欲しい。ただね、知ればつまらないとかではありません。現に、私は2回目も楽しく観ることができました。まだ何度か観てもいいと思ってます。新しい発見があるかもしれませんし、なんたって素敵な俳優に出会える。……あと、これもくどいかもしれないが、映画好きには、是非! 映画好きと自負するなら、これは、きっとあなたにもハマる(※)。
※ひとつだけ補足をするのなら、ここで前に『ルックバック』の記事を書きました。その記事でも同じようなことを書きましたが、この映画の良さが、分からない人もいるかもしれません。『ルックバック』の時は、それは、それでもいいと書きましたが、本作では違います。この映画が分からないのなら、勉強か、経験不足。今、分からなくても、きっと分かる時が来ます。だって、いい映画だからね(これは決して『ルックバック』が「いい映画」じゃないと言っているわけではありません。あれは、人による。そして、少しずるい節があるという話)。
そしてこれも『ルックバック』と同じ。もし、まだ観ていないのなら、これ以降は観てから読んだほうがいいです。できれば何の事前情報もなしで観ることを勧めます。次の「簡単なあらすじ」も読まないことを私は勧めます。どうしてって? もったいないんだ。できれば何も知らないで観て欲しい。そしたらもっと楽しめると思います。
簡単なあらすじ
1960年代末のアメリカ・メイン州。緑豊かな片田舎にひっそりとたたずむ古めかしい母がかつて住んでいた屋敷に、母の姓マローボーンと苗字を変え4人兄妹が引っ越してきた。責任感の強い長男ジャック(ジョージ・マッケイ)、家族思いの長女ジェーン(ミア・ゴス)、頭に血がのぼりやすい次男ビリー(チャーリー・ヒートン)、まだ幼くて天真爛漫な末っ子サム(マシュー・スタッグ)。祖国イギリスでの悲惨な過去を捨てて彼らは、この人里離れた屋敷で新しい人生を踏み出そうとしていた。しかしその矢先、心優しい母親ローズ(ニコラ・ハリソン)が病に倒れ、この世を去ってしまう。「皆を守ってね。どんなときも」。ローズの遺言を胸に刻んだジャックは妹と弟たちに呼びかけ、「誰も絶対に僕たちを引き裂けない。僕らはひとつだ」と固く誓い合う。 すると間もなく、突然の銃声によって兄妹は恐怖のどん底に突き落とされる。イギリスで悪名を轟かせた凶悪殺人鬼の父親(トム・フィッシャー)が脱獄し、執念深く彼らを追ってきたのだ。ジェーンの絶叫を耳にしたジャックは、血も涙もない父親に敢然と立ち向かっていくのだった……。
6ヵ月後。~~『マロ―ボーン家の掟』公式サイトより抜粋
ここまで! 驚いたことに公式では、まだまだ続くのですが、そこまで知る必要はありません。ちなみにジェーンの絶叫(上に貼り付けたやつ)までわずか10分。そう「マロ―ボーン家」というように、家族の物語。4兄妹と、越してきた町の住人アリー。
これを観て下さいな。公式の予告です。よく出来ています。
そうです! ここでタイトルの伏線回収。5つの掟の登場です!
【マロ―ボーン家5つの掟】
1つ、成人になるまでは屋敷を離れてはいけない
2つ、鏡を覗いてはならない。
3つ、屋根裏部屋に近づいてはならない
4つ、血で汚された箱に触れてはならない
5つ、‘何か’に見つかったら砦に避難しなくはならない
これねえ、面白いとは思いますが、こんな予告必要なかったね。まあ、公式だからいいですが、後付けじゃないかな。というのが、私の感想です。邦題は『マロ―ボーン家の掟』だってことは分かっていますけど、洋題って『Marrowbone』でしょ。どこに「掟」って、ある? なんで私がこんなことを言うのかって、違和感があったからです。不必要だよ、私は知らないまま観たし、それでよかったと思います。やっぱりいらない情報。売り方の1つだとは理解しますが、この1点だけ、この映画に対し、苦言を述べたい。でもまあ、何かを売り出すって難しいものですよね。
それで5つの掟というのが「あらすじ」に補足されます。この映画は家族の物語。観ていると、少し「ん?」ってなるところがあります。そんなこと気にしないで、と言ってもいいし、そういうところに意識をして観ても結構。どうせ、分からない。でも、それでもいい。こういう体験ができるって素敵です。

本ブログ初のホラータイトル!

ゾックゾクするやろ!
小ネタ
予告編35秒海辺のシーンのセリフ「you have no idea」ですが、字幕は「彼には近づくな」です。直訳すると「あなたはわかってない。」になります。ここから、「お前はあいつの危険度が分かっていない」→「彼には近づくな」ってことですね。映画の全体、前後からじゃないとこの翻訳にはなりません。映像翻訳家ってすごいですね!
面白いと思うところ
冒頭母の、言葉選びの美しさ。希望がある。とてもオシャレでした。
「これは大きな一歩よ。もう“フェアバーン”じゃない。今日から私たちの名字は“マロ―ボーン”。線を越えたら思い出は消え――私たちの物語はここから始まるの」
「あいつは来ない?」
「誰? 線を越えたから――忘れちゃったわ。もう誰にも悩まされない。二度と」
いったい何が始まるのか、全然見当がつきませんでした(だから先にも触れましたが、本当に、何も知らない方がよっぽどいい。でもね、これはジレンマなんですよね。だって、映画館だろうがレンタルだろうが、少しは知らなければ、興味を持たなければ、観ないですよね?)。たまたま私が何も知らない状態で、観ることが出来たのはラッキーでした。この時のワクワクは、たまらない。映像、風景もよかった。逃げてきたってことから始まるストーリーなので、それを果たした後の、幸せのエンディング感が、とても美しかったです。まるでエンディングのお手本のような、描写。これはこれだけで十分いい。ですが、まだ冒頭も冒頭、まだジェーンは絶叫していない。そう、始まってさえいなかったわけです。で、以降、……何が面白かった? という問いに答えるのは、結構難しいです。ただ、魅せられます。引き込まれる。そして、上手い! と、きっと思うでしょう。カラクリだとか、そうじゃなくても、上手い! 撮り方、作り方がそうですね。これは、面白さに直結している。期待を裏切らない。いや、きっとあなたも裏切られる。でも、悪い気はしないはずです。
こういう人にお勧め
挑戦作品ですね。「観てみろ! あなたに分かるかな」そう、挑発してやってもいい。ある意味、楽しさとは別の見方で、もちろんそれも全部含め「面白さ」であることには違いないのですけどね、作り手と勝負。そういう気概をもって観てもいい。ひとつ提案します。たとえば、それが「あなた」じゃなくてもいい。周りの人に紹介してみて下さい(もちろん、まずはあなたの番ですよ)。この映画は、『マロ―ボーン家の掟』は、いい映画だ、私はたくさんの人に観て頂きたい。それはエゴでしょうか。いや、違います。そのために、私は、書いています。
と、ごちゃごちゃ言わずに、考えずに、観て下さい。損、させませんよ。むしろ、感謝して欲しいくらいですね笑 とにかく掘り出し物(だと思っています)。是非!
ここから観た人向けの話
ここからは観た人向けなので、あえて「こういうカラクリ・ネタバレがあります」とは書きません。読む人が観ているということを前提に書きますので、主語がないものがありますが、ご了承下さい。
5つの掟について
1.成人になるまでは屋敷を離れてはいけない
ジャックが成人になる前に、母親が病で倒れ、死にます。そのことを公にすれば、兄妹は施設に入れられるなど、バラバラになるからです。だから、秘密にしましょう。というだけでしょう。
2.鏡を覗いてはならない
「見えない」という現実と向き合うことになってしまうため、課したルールでしょう。
3.屋根裏部屋に近づいてはならない
そこに何があるか、全部分かっているからですよ。思い出します、ど級のトラウマ。という、シンプルな話でしょう。
4.血で汚された箱に触れてはならない
ここでオカルト。「呪い」なんて、紐づけるのでしょうかね。結果、父親がやってきます(証言で嘘をついた母と、それを何かの保険としてもっているのが悪い)。実態は、触ったところで、何かしらの罪や罰があるということはないでしょう。
5.’何か’に見つかったら砦に避難しなくはならない
それはそうですよね。命の危険が迫っていますからね。戦うか、逃げるかしなくてはいけません。だけどあの砦には、防衛能力なんてありません。ただ、ジャックはあの場所が、心の拠り所だったのです。ここに来れば、みんながいる。その一点だけでしょう。
どうでしょうか? 前述しましたが、私はこの5つの掟に納得がいっていません。きっと後付けだと思っています。いや、絶対にそうだと思っています。だってそうじゃないでしょうか。上の、私の回答。特に4とか、さすがに苦しくないですかね。でも、これは配給側の作戦。逆に、この掟で興味がわいた方もいるでしょう。なら、これでジレンマの解消ですね。作戦成功です。
違和感について
ジャックは、まるで全盲のように、どこか焦点があっていないところがありましたよね。どこか聞いているだけで、合わせている、そんな感じでしたね。加えて、外に出るのも、アリーと話すのも、ポーターと話すのも、ジャックだけ。気がつきましたか? これはあれですね。かの有名な、「見えない」映画を思い出しました。他にも、母の署名のあと、ジェーンがカーテンを閉める。そして、ジャックも同じことをした。ジャックの入浴中にジェーン。兄妹とは言え、さすがに……。
父が3人に毛布を掛けたことについて
それにしても、ほんとう、あっという間に死にましたね。すごいマーダーです。血も涙もありません。が、3人に毛布をかけています。腐っても子の親? それとも隠しているだけでしょうか。言ってしまえば、凌辱もしないで……彼のキャリアならしそうですし、生かして楽しむということはするのではないでしょうかね。ならずもの(あらいぐま)を喰った痕跡があることを考えるに、3人もいくらか食べられているのでしょうか。だとすれば、他の動物などから死体を守っていた。なんて理由があったりするかもしれませんね。
最高のセリフとアリーについて
最後、アリーに言うこれ「君がいたら、みんなが消える。……」ここね、痺れましたよね。冒頭の、この線を越えたら、という母の言葉も素敵でしたけど、やっぱこれ。と、病院にて先生が「病んだ心には愛は育めない。ジャックとの間には家族も作れない」なんて言うと、これにアリーが「ご心配、ありがとうございます」と答えましたよね。この時のアリーの芝居、よかったですよね。奥行きがあった、素晴らしい演技でした。
事件のその後について
いいですか、思い出してみてください。すごい事件なわけですよ、街はずれの大きな家に、母(埋められている)と、ジェーン・ビリー・サムという3兄妹の遺体。そして、殺人鬼の父親(脱走中)とポーターの遺体が見つかったはずです。
で、お咎めはなし? 平和に暮らせるとでも? ジャックは被害から多重人格になってしまった。だから今はあの屋敷で療養中。アリーが面倒を見てくれている。さて、まかり通りますかね? 事件から月日がそこまでたっているとは思えませんでしたが……もしかして、全部ジャックの狂った頭の中の出来事だったのでは。全然ある。6か月後なんてない。あの冒頭に観た最高のエンディング。あれが、あの束の間こそが、マロ―ボーン家のハッピーエンド。ジャックは、命からがら生き延びた。そして治療にあたった病院の看護婦がアリー。あとはジャックの夢の中。というのは、どうでしょう。
皆さんはどう思いましたか?
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