基本情報
2026年度上期、第175回直木賞候補作に芸人「オードリー」若林正恭の小説デビュー作、『青天』がノミネートされた。予兆はあった。発売から話題を集め、本屋では平台に堆く並べられていた。昨年度末くらいの記憶だ。その時は、手に取ることはしなかった。「多才だねえ」とか思うくらいで、でも、アメフト!? 悔しいが、これは彼の正しいデビュー作の類なのかもしれない、と独り、にやついた。若林(悪いが以降も呼び捨てにする)がアメフト経験者だということを知っていたから。でも、若林だって、それなら期待しちゃうじゃないか……アメフトは分かった。でも、いったいどんな物語を紡ぐのだろうか……と。期待と不安がある……不安よりだ、あまり読みたくなかった。けっこう好きなんだ「オードリー」。だから、もし、つまらなかったら嫌だな、なんて思った。今のオードリーでお腹いっぱい。小説はまた今度、いつかにしようと思っていた。──それから売り場はいったん落ち着きを取り戻したが、このニュースが飛び込んできたわけだ。……これはさすがに読まないわけにはいかんわけで……が、たぶん僕はもうひとつの理由で、この小説から避けていたのだと思う。
そう、なんたって『アイシールド21』の存在がある。どうせ、あの作品は上回らない。超えられない、はず。それが始めから分かっているんだ……なんて、失礼なこと、か、最大限の敬意なのかもしれないが、「アメフト」は、あの傑作マンガで十分なんだ。あとは何をしても二番煎じだか三番だ、なんてなるに決まっているんだ──※
※サッカーなら『キャプテン翼』、バスケなら『スラムダンク』、テニスなら『テニスの王子様』?(ここら辺から怪しくなるww)、バレーなら『ハイキュー』、野球なら『ドカベン』……とか※※
※※待て! 本当かな? 流石に「あだち充」の『タッチ』や『H2』だとか、「マガジン」にも何作かあるし、「サンデー」に戻れば『メジャー』も人気かな……ただ、野球以外は圧倒的に「ジャンプ」だね。ただ、もう違うところもある。あるよね、そうじゃなければいけない気もするし、たしかに例に挙げたのは間違いなく名作だけど、もっと面白い作品が出てきてもいいよね。実際、サッカーについては、キャプ翼はもちろんひとつ時代・アイコンだったかもしれないが、もっと他にもある。あるよね、最近は『ブルーロック』? だったかな、あるんだよ。それはそうだ、いつまでも先人、先輩の背中だけを見ているわけじゃない、負けたくない、追い越したいんだ……とか熱くなったところで我に返る。流石にかなりの脱線だと自覚するww
はい、落ち着いて。深呼吸。ということで、若林の小説デビュー作、その題材はアメフトだった。読んだ。うん、よかった。よくある青春小説だった。読了目安時間は5時間。
違う話になるが、大事なこと。もし、まだ『アイシールド21』を知らない人がいたのならば、まずはココを押さえよう! 超面白いよ! 一気読みできちゃうよ! 胸熱! 僕はヒル魔と雪光のところが大好き!!

さて、疑問符のテニス漫画のトップは何かしらね。

テニスの王子様か、ベイビーステップか、はたまた浦沢直樹のHAPPY!かww
簡単なあらすじ

総大三高の「アリ」こと中村昴が所属しているのは、万年2回戦どまりの弱小アメフト部。引退試合でも、強豪・遼西学園の壁は高く、打ち砕かれて終わる。でも胸に残るのは、グラウンドで味わった痛みと、自分への苛立ち──
若林正恭『青天』文藝春秋、帯より
まあ、ぶっちゃけて言えば、よくあるやつなんですよ。弱小・負けから挫折・グレて、でもやっぱり好きで、一度しかない学生生活を、後悔したくなくて、今を生きる、青春。がむしゃらに、死ぬ気で頑張って、もう一度戦いに行く。そういうの、なんです。でも知っているよ。これ、みんな大好きなやつですよね。
他に、ぱっと浮かんだのは松本大洋の『ピンポン』。特にマンガじゃなくて映画だけど、大好きなんだよな。ペコとスマイル、それにアクマとドラゴンね、懐かしい。そうそう、「どこ見て歩けば褒めてくれんだよ!」ってセリフがあるんだけど、何度もモノマネしたくらいハマったね。もちろん、「空飛ぶんだ。月にタッチするなんて、わけないぜ!」もね、そう、あとスーパーカーの音楽がまたいいんだ。と、また盛大に脱線ww せっかくだ。貼るから予告くらいみて下さいな。めちゃくちゃいいから! 強くオススメする。なるほど、卓球なら『ピンポン』というわけですね。よく分かります。も、あるけどあの『ピンポン』は実写化に成功し過ぎている。こんなこと、なかなか言わないぜ。そのくらい、最高なんだよな。
面白いと思うところ
あらすじのところでも書いたのですが、よくあるやつなんですよ。でも、やっぱりこのパターン大好きな人が多いのでしょうね。かく言う僕もそうだし。とにかくね、王道なんですけど、胸熱なんですわ。
ありがちな紹介だけど、魅力的な登場人物だとかね、グレて不良グループと一緒にいる時の(第2Q)書き方が、よい。試合ではないから、バチバチに熱い描写ではないんだけど、まるで青い炎みたいに若林は書くんだ。淡々と……これはこれで、成立している。むしろ、ここがあるから後半が生きる。アリを、好きになれる。
教科書通りなやつなんで(悪く言っていない、むしろ出来過ぎている)、起承転結もしっかりしている。その点を説明しても、良作であると思うね。
また僕は「基本情報」で語ったように『アイシールド21』を愛読し、ちょっとばかしアメフトの知識がある(これは、「こういう人にお勧め」にも関連する)んだけど、だから、イメージがかなりしやすい。その分、面白く読める。≒もしまったくの門外漢であれば、先にYouTubeかなんかで、簡単に予習しておくといい。分かると、面白い。というか、アメフトって、かなり面白いスポーツだと思う。
こういう人にお勧め
本作は平成11年の話で、約25年前になるんだけど、タイムスリップできる(そんな気にさせる)。ということで、お勧めする層としてはまず、その時に絶賛青春していた今の40歳から50歳くらいの方などドンピシャ。あと何より青春もの、スポーツ系、アメフトが好き・興味がある方は是非。男らしさ満点、女性の影はなし、男臭い青春スポーツ系がたまらん。男受けの小説。
と、若林正恭は、『青天』を”小説家らしく書こう”としていない。これね、友人とも同じ意見だったんだけど、なるほど、そう来たかと思った(この点については、反対意見のようなことを読んだ人向けで書く)。
この点はね、好みが分かれると思うんだけど、これはこれでいいと思う。
文章が文学っぽく着飾っていなく、むしろエッセイを書く人の観察眼が、そのまま小説に流れ込んでいる感じ。だから「文章が上手い」というより、”視線が面白い”作家という印象を受ける。
読みやすいよ、男臭いよ、きっと、たまらないよ。是非!
読んだ人向け
批評(苦言あり)
まあ、実写化するでしょうね。
で、すぐ上で書いたことだけど、反対意見。ちょっと期待外れ。……これは、「つまらなかった」とか、そういうことで言っているのではなくて、実際、面白かった。でも、ぶっ飛んでいない。その点、若林になら、期待があった。妙に収まり過ぎている。抑えている。あなたはどう思いましたか? 正しい例えか分かりませんが、憧れの人の私服や、カラオケのチョイス。決してダメじゃないんだけど、期待があった。イメージと違う、という感じ。なにその服―! ちょっとダサい? 好みじゃない。とか、そんなゴリゴリの流行りな曲歌っちゃって……らしくねえ。とか、どうかな、伝わっている?汗
それと、これからあげる点は小説として、どうなのかなと思うこと。
地の文で、何かで例えるところ。僕は分かるよ。でも、平成11年の話で、25年前の話で、僕は15歳で、そこのすごくピンポイントなんだよな。だからお勧めする層は、まずココの人達。音楽もそう、ただ、セリフで使われるのならばいいが、あまりに多用されていると感じたんだ。で、思い出したわけです、自分、なにぶん、性格が悪いもので、以前読んだ柴崎友香の『春の庭』という、10年ほど前の小説で、芥川賞をとったんだけど、その冒頭あたりでこんなことを書いていた。
「アパートは、上から見ると“「”の形になっている」たしかそんな文章だった。これねえ、ありなん? なんか嫌だった。作家にとってさ、描写って、もっとも重要で、ほとんど唯一の武器なのでは?(とか言っても、僕も苦手なんだけどね。が、いち読者として、小説好きとしてはそんなことを生意気にも思ったわけですよ)
そしてこれ面白いのは、選考委員の村上龍もほとんど同じような言葉でブチ切れているコメントがあったのを見て笑った。実際に思い出してみよう、引用する。僕が言いたいことはね、若林は「固有名詞」で描写するんだ。
・只野がキレた顔が『ベスト・キッド』の師範が怒っている顔にそっくりだった。
・睨んだ顔が『キッズ・リターン』の組長役の人に似ていた。
・Zeebraの「真っ昼間」、勿論THE RHYME ANIMAL REMIX E.P.2バージョン。Zeebraの夏を讃えるリリックに後ろ髪を引かれながらヘッドホンをずらすと、打ち上げ花火の破裂音と笑い声が遠くから聞こえた。
・ヘッドホンからはOZROSAURUSの「045 STYLE」が流れている。
・ヘッドホンからはスチャダラの「B-BOY ブンガク」が爆音で流れていた。
・ヤバいヤバいヤバい! 誰もが出川哲郎と化して叫ぶ。若林正恭『青天』文藝春秋より
って、合わせて書いたけど上の2つで、そして全部そうなのだけど、僕は分かるんだよ。むしろハマっている。面白い。が、小説としてはどうなのかなーなんて思いました。でもね、これは、ある意味で情報のパッケージ化なのか、とか考えると腑に落ちるわけ。〇〇的だ、で、実は結構整理つくんだよね。というか、イメージしやすい。僕もよく「なんだ『ガンダム』と同じね」だとか、「『アルマゲドン』のような話」だとか、ちょっとアカデミックで言えば「『失敗の本質』的だね」みたいに言う。まあ、それと同じなのかな……どうだろう。
あと最後の方、アリのこれ。こういうところね。カッコいいと思った。以上。ほかに特にコメントなし。青春、って感じ。
「反則しちゃったとか考えるな。過去の話だ。過去を切れ。
勝つか負けるかなんて考えるな。未来の話だ。未来を切れ。
残り1分17秒なんて生きるな。“今、ここ。”のワンプレーを生きろ」若林正恭『青天』文藝春秋、p270より
ほか、タイトルが強すぎる件について。
これは僕の言葉じゃないんだけど、友達の意見。でも、なかなか秀逸だったもので、ここで披露させてもらう。要は、読んだあとに「ああ、だから青天なんだ」と思うんだけど、途中まではほとんど”青”を感じない。
むしろ、泥・汗・血・息苦しさ……そんな色ばかりなんだ。だから最後に青空が現れたときの開放感がすごい。
つまりこの小説の色は、「最初から青い物語」じゃなくて、「青に向かう物語」なんだと思った。
皆さんは、どう思いましたか? 若林、直木賞獲れるといいね! でもさ、本人はもとよりさ、この本は既に十分過ぎるくらい売れている。ノミネートだけで十分さ、実写化もきっとするんだし、それで満足してもらってさ、……って思ったけど、他の候補作を見て……うーん直木賞の方は疎い。よく知らんが、勝手に予想。◎は『見えるか保己一』で!
それではまた次の記事で!! ちなみに今、いつか読もう読もうと温めていた『ドグラ・マグラ』を読んでいるところ、すごいわ……
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