『成瀬は信じた道をいく』あらすじ付き作品紹介と、捧ぐラブレター

小説

基本情報

 あっ!! 成瀬の続編、『成信』の文庫が出とるやん!! それはもう、すぐに買った。そもそもだ、発売日はいつや、いつやと調べたら6月の終りには発売していたって話だ。ということは一か月も前の話になるわけで、これはいけんもんで、書店に一か月も行っていなかったわけで、疎かにした末路に違いないわけで、悔しくある。が、なにより嬉しいのだ! また、成瀬に会えるぞ。あの、最高の主人公、再び!

 さて、成瀬だ。まずはシリーズ一作目の『成天』この表紙よ。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」幼馴染の島崎みゆきにそう宣言したのは、中学二年生の成瀬あかり。閉店を間近に控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組の中継に映るといいだした。さらに、お笑いコンビ・ゼゼカラでM-1に挑み、高校の入学式には坊主頭で現れ、目標は二百歳まで生きること。最高の主人公の登場に、目が離せない! 本屋大賞を受賞した圧巻の青春小説!

『成瀬は天下を取りにいく』 宮島未奈 | 新潮社より

 成瀬シリーズの1弾『成瀬は天下を取りにいく』は、2023年3月に刊行し、2024年に本屋大賞をとった。本作はすぐに話題になって、よく売れた(現時点でシリーズ累計250万部。まだまだだ、数字はもっと確実に伸び続けるだろう)。で、『成天』が文庫になったのは2025年6月と、体感としては、けっこう時間がかかった(これね、比べちゃいけないが、近年の映画ってさ、映画館で上映してから、自宅で、サブスクで観られるようになるまでに1年、早いものだったら半年とか、で観ることができる。よねえ、まあね、よそはよそ、うちはうち。だよね、書籍はたしかに単行本から文庫本までには、それなりに時間がかかるものよね)。そして私、お恥ずかしながら、それまで読めてなくて、文庫になったら……なんて思っていたところだった、『成瀬は天下を取りにいく』はずっと読みたくて、やった文庫出たぞ! と、あの時もすぐに買ったものだった。

 この成瀬シリーズは完結している。今回紹介する『成瀬は信じた道をいく』が2弾で、最後となる3弾は『成瀬は都を駆け抜ける』(2025年12月刊行)という作品で、これもまた表紙かおがいい。

『成瀬は都を駆け抜ける』 宮島未奈 | 新潮社より

 成瀬、綺麗になったな。次はいったい何をしてくれるんだろう。早く、読みたい! ううん、文庫になるまで我慢できる気がしない。きっと一年後くらいなんだろうな……ということでごめん、僕の為に購買リンクを貼りつけておくww でも、きっと君も買うよ。だって、成瀬は『成天』の時より『成信』の時の方がより魅力的だった。だからきっと『成駆』の成瀬はヤバイに決まっている。たとえばあの伏線が回収されるのかも気になる。とか、って、もう買っちゃったかな? もし、気になるならココから買ってくれると嬉しい。よろしく。

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 そして、長くなったが、今回紹介する『成瀬は信じた道をいく』の話になる。実は僕、ずっとこの表紙かおがたまらなかった。単行本の時からずっと思っていた。この眼、すごくいいでしょう。

『成瀬は信じた道をいく』 宮島未奈 | 新潮社

 最高。唯一無二の青春小説。読了目安時間は3時間半(参考:『成天』は3時間)。『成天』もそうでしたけど、『成信』も全五編。一編読むのに30分、ホントあっという間に読み終わる。

 そして大事な余談。三作品、どれも素敵な装画でしょ。これは、イラストレーター「ざしきわらし※」の絵で、その功績は大きい。ざしきわらしさんは、成瀬の“顔”を作った。『成信』の、成瀬のあの目を見てほしい。成瀬は、写真を撮られるときに無表情が多い。成瀬の顔には、笑顔よりも、“私は私だ”という意志がある。そう考えると、この装画、ほんとうに成瀬そのものに見えてくるんだよね。

 もうひとつ余談、先日オーディブルを試してみた。手始めに『成天』から笑 これが、なかなかよかった。5時間。これこそ本当の隙間時間から小説に触れることができる。ただ一応、まだ素人の私は、読んだことがある本から、また、あまり難しくないものから試してみようと思い、『成天』に落ち着いたわけだ。まだ試したことがない人、騙されたと思って聴いてみて。いいよ。

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※ざしきわらし:1987年福岡生まれのイラストレーターで、福岡を拠点に活動している。独創的なファッションと、かなり強い目力を持った女の子を描くのが大きな特徴。芸術新聞社は「独創的な色彩でガールズイラストを描く」と紹介していて、2026年5月には3冊目の作品集『PEAFOWL』も出ている。

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HARU
HARU

俺もざしきわらしさんに似顔絵書いてほしい。

PENくん
PENくん

すっごい不細工な猫を描かれそうだがなww

簡単なあらすじ

 我が道を突き進む成瀬あかりの人生は、今日も誰かと交差する。お笑いコンビ「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の大学受験を見守る父親、バイト先に現れたクレーマー、観光大使になるべくして生まれた女子大生。個性豊かな面々が新たな成瀬あかり史に名を刻むなか、幼馴染の島崎が故郷に帰ると、成瀬が書き置きを残して失踪しており……。最高の主人公が再び登場する2024年本屋大賞受賞作の続編! 

宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮文庫、裏表紙より

面白いと思うところ

 成瀬は、これまで僕が出会ってきた多くの主人公の中でも、すごいんだ。唯一無二なんだ。それは、きっと君も会えば分かる。でもね、困ったことに、そんな彼女の圧倒的な存在感を、うまく喩えられないんだ──

──成瀬の魅力は、破天荒な行動そのものではない。成瀬にとっては当たり前のことが、周囲の人間にとってはとんでもなく面白い。その“ズレ”こそが成瀬シリーズの笑いを生み、同時に、成瀬が誰にも似ていない唯一無二の存在であることを際立たせているんだと思う。そして成瀬は、自分らしく生きることを読者に説かない。ただ自分の道を進む。その姿を見ているうちに、こちらまで少し自由になったような気持ちになるんだ。

 成瀬に嫌味はない。成瀬って、別に「私は正しく生きています」なんて言わないんだよね。ただ、やっている。自分がやりたいことをやる。自分で決めたことを貫く。人の評価を気にしない。誰かに認めてもらうために行動しない。そして、自分が正しいと思ったことから逃げない。

 これって、言葉にするといかにも立派なんだけど、僕たちは実際にはなかなかできない。だから成瀬の行動を見ていると、「いや、そこまでやるか(笑)」と笑ってしまう一方で、心のどこかでは、「……でも、本当はこういうふうに生きたいんだよな」なんて思わされる。
 ここが成瀬の「面白さ」と「魅力」がつながっているところなんだと思う。
 そして、「嫌味がない」という話も、まさにそこだと思う。

 成瀬は、人から褒められるために「正しく」生きているわけじゃない。だから、正しさを他人に押しつけない。「私はこんなに頑張っている」「あなたもこうするべきだ」「私は人の目なんか気にしない」なんて絶対に言わない。ただ、そう生きている。だから周囲からすると、「なんなんだ、この人は(笑)」となる。でも、その姿を見ているうちに、なぜか嫌いにはなれない。むしろ、ちょっと羨ましくなる。

 嘘じゃないんだ。成瀬は、周りからの評価を気にしていないことが、滲み出ている。「人の目を気にしない人」を演じている人って、実はすごく人の目を気にしている。でも成瀬には、その「人からどう見られるか」という発想自体が希薄なんだよね。

 だから「破天荒」という言葉だけでは足りない。
 だんだん分かってきた。

 成瀬は、僕たちが心の中では「こうありたい」と思っていることを、本人だけが何の気負いもなく実践してしまう。

     だから驚く。
     だから笑う。
     だから羨ましい。
 そして、だから嫌味がない。

 成瀬を読んでいると、自分自身を笑える。

 成瀬を見て、「なんでこの人は、そんなこと平気でできるんだよ(笑)」と笑っている僕たち自身が、実は、「人にどう思われるか」「失敗したら恥ずかしい」「変な人だと思われたくない」と、いろんなものを気にして生きている。

 つまり成瀬は、僕たちが自分自身にかけている「こうしなきゃ」という縛りを、あっさり飛び越えていく。
 だから成瀬が面白いというより、成瀬を見ていると「自分たちの不自由さ」が見えてきて、それが可笑しいんだ。

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 もしかしたら成瀬が変なのではなく、僕たちが「普通」に慣れすぎているのかもしれない……そうだ! 普通、普通圧力と言えば、コレ。

『コンビニ人間』あらすじ付き作品紹介及び考察
まえがき お金がない・出会いがない・時間がない という3つのないが嫌いだ。だってそんなことを言ったところ、だからなんだ。となるわけで、たしかに言うのはタダだから構わないが、あまり吹聴するのはオススメしないね。だってね、それらは全部自分でなん…

こういう人にお勧め

──周りの目を気にして、本当はやりたいことを少しだけ諦めてしまう人……

 成瀬って、そういう人にすごく効くと思うんだよね。別に、自分らしく生きよう! なんて説教されるわけじゃない。ただ成瀬が、周囲の評価なんてほとんど気にせず、自分が信じた道を淡々と進んでいく。その姿を見ていると、「あれ、僕もそこまで人の目を気にしなくていいんじゃないか」なんて思えてくる。いけない、これじゃあ少し自己啓発っぽい。そうだなあ、「毎日をちゃんと生きているのに、なんとなく退屈している人」とか。

 成瀬は、世界を大きく変えようとはしない。でも、本人が何かを始めると、日常が妙に面白くなる。成瀬は、閉店する西武大津店を見届ける。成瀬は、M-1に挑戦する。成瀬は、地域のために何かをする。成瀬は、知らない人と出会う……そうやって成瀬が動くと、何でもない日常に「そんな楽しみ方があったのか」と思える瞬間が生まれる。

 成瀬は、人を励まそうとはしない。でも読んでいると、なぜか元気になる。「人生、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃない?」成瀬の姿からは、そんなふうに思わせてもらえるんだ。ぎゅっとまとめる、「ちゃんと生きようとしているのに、少しだけ窮屈になっている人」かな。

 成瀬は、僕たちに「こう生きろ」と教えてくれる人じゃない。「こう生きてもいいんだ」と、見せてくれるんだ。

 ちょっとまとめてみる、
「人の目を気にして、少しだけ自分を抑えてしまう人。毎日をそれなりに楽しく生きているけれど、どこか物足りなさを感じている人。そして、自分らしく生きるということを、言葉ではなく一人の人間の姿から感じてみたい人」
 と、最近ちょっと元気がない人にお勧めしたい。

 だから、成瀬を必要とするのは「自分を変えたい人」より、むしろ「自分を変えたいわけじゃない。でも、もう少し自由に生きてみたい人」なのかもしれない。

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読んだ人向け

(感想文という名の)成瀬あかりに送るラブレター

 今回は批評をしません。考察もしません。成瀬あかりに送るラブレターを書きます! 一応確認ね、批評は作品を見つめるもの。考察は作品を読み解くもの。で、ラブレターは想いを届けるものです。

成瀬へ

 いきなりだけど、成瀬にラブレターを書くことにした。どうしてかと言われたら、きっと僕は君のことが好きだからだ。だけど面と向かってってなると、どうしたって君みたいにできる自信がない。だから、手紙にすることにした。

 僕は君のことを、他人にうまく説明できない。君のどこがそんなに面白いのかと聞かれると、破天荒だから、と言いたくなる。でも、それだけじゃない。君の話し方が面白い。行動が面白い。写真に写るときの無表情も面白い。とか、そんな……だけど、たぶん僕が君を好きなのは、そういう「面白いところ」の奥に、一本の芯が通っているからなんだと思う。

 君は、人からどう見られるかを、あまり気にしない。やりたいと思ったらやる。やると決めたらやる。自分が正しいと思った道を、自分の足で歩いていく。僕たちは、それを「自分らしく生きる」と呼ぶ。
 でも、実際にやろうとすると難しい。人の目が気になる。失敗が怖い。笑われたくない。嫌われたくない。そうやって、いつの間にか自分の中に小さなブレーキをいくつも作ってしまう。だけど君には、それがあまりない。
 だから君が普通に生きているだけなのに、僕たちには君が破天荒に見える。なんだか、おかしいよね。君が特別に変わっているのではなくて、僕たちのほうが「こうするものだ」という決まりに慣れすぎているのかもしれない。君を見ていると、そんなことを考える。
 そして、ちょっと羨ましくなる。

 君は、僕たちが「こうありたい」と心のどこかで思っていることを、平然と実践してしまうから。それなのに君は、僕たちに「こう生きろ」と言わない。自分が正しいと思うことを、他人に押しつけない。ただ、君自身がそう生きている。それがいい。だから君を見ていると、「僕ももう少し、自分の好きなように生きていいのかもしれない」と思える。
 君は、人を励まそうとしていないのに、僕は勝手に元気をもらっている。

 それから、君の大津への愛も好きだ。どうしてそんなに大津が好きなのかと聞いたら、君はきっと、「生まれ育ったからだ」とでも言うんじゃないだろうか。それだけ。でも、それでいいのだと思う。
 自分が生きてきた場所だから大切にする。自分が出会ってきた人たちだから大切にする。自分の人生だから、自分で引き受ける。君の地元愛は、きっとそういうところから来ている。
 君は、自分の人生をちゃんと愛している。だから、そこにあるものも大切にできるのだと思う。

──成瀬。僕は君みたいには生きられない。たぶんこれからも、人の目を気にするだろうし、余計なことを考えるだろう。写真を撮るときには、たぶん笑顔も作る。それでも、君を見ていると少しだけ思う。

 もうちょっと、自分のことを信じてもいいんじゃないか。
 ももうちょっと、好きなものを好きと言ってもいいんじゃないか。
 もうちょっと、自分の道を歩いてもいいんじゃないか。……とか、そんな風に。

 君は僕に何も教えていない。なのに、なぜか僕はそんな気持ちになる。
 だから、ありがとう。
 君がこれから何をするのか、僕には分からない。でも、ひとつだけお願いがある。
 成瀬。これからも、君は君のままでいてほしい。人の目なんか気にせず、無表情で写真に写って。大津を愛して。島崎と笑って。思いついたことをやってみて。失敗したって、また次の道へ進めばいい。
 そして、信じた道をいってくれ。

 僕は、その姿をこれからも眺めていたい。……まあ、君のことだから、僕が眺めていようがいまいが、勝手に進んでいくんだろうけどね。そこがまた、好きなんだ。

 成瀬、君に出会えてよかった。また会おう。

 作者は宮島未奈。まだ、新しい作家だ。実は成瀬シリーズ以外の小説はまだ少ない。こんな魅力的な主人公を書けるんだ、ほかの作品だって面白いに決まっている。基本情報で書いた『成駆』単行本と同じ、まずは僕が買う。でも、あなたもよかったら。

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