基本情報
ええ、40歳のおじさんですが、若作りに励み・筋トレを頑張って、決して40歳には見えないお兄さんですがww、『ちいかわ』にハマっている。我が家では同い年の妻と、小学校4年生の娘も、とにも『ちいかわ』に夢中だ。もちろん(なんの「もちろん」だよって話ですがww)、彼女たちのほうがやれグッズなんかも欲しがることで、ガチよりだ。それに私は、新参者であって、こう書くのもあれだが、信じていなかった口だ。もう何年も前から世間で流行っていたことは知っていたが、正直、理解しかねていた。だいたいなんだ、『ちいかわ』って、と会社の若いのに聞けば、教えてくれた。「なんか小さくてかわいいやつ」だと言うわけだ。それに私は「はあ、嘘つけ」そんな冗談にかまってなどいられないと、一蹴したが、コレがどうやら本当の話だというじゃないか。
これは「基本情報」じゃない、ただの与太話じゃないかと君は言うかもしれないが、違う。大事な序章なんだ。私と、『ちいかわ』との出会い、そして気がつけば映画館に足を運ぶまでになった経緯を説明したい。
『ちいかわ』は、原作ナガノによるマンガで、現在「めざましテレビ」で火曜と金曜の朝7時半くらいから1分ほどの超ショートでアニメ放送されている。
主要キャラは3人? 匹? で、こんなやつらだ。

左から「ちいかわ」、「ハチワレ」、「うさぎ」という順番(我が家も、コミックス買いました。全編カラーで、けっこういいお値段するけど、マンガも面白い)。この小さくてかわいい子たちなんだが、その内、ちゃんと話すことができるのは「ハチワレ」で、ちょっと話すことができるのが「ちいかわ」。で、「うさぎ」は叫んだり暴れたりで、相槌のようなことはできるが、喋らないときている。
これに、……「はあ」と、ため息交じり、昔の私と同じようなリアクションをしている読者が目に浮かぶ笑
が、とにかく。可愛いんだ。私は特に「うさぎ」。「ハチワレ」の声も、「ちいかわ」の優しさも……って、まるで説明になっていないって? それもそうだな。よし、面白さはアトでゆっくり書くとして、「基本情報」に戻ることにする。
待て! これではニワトリ。もう忘れたって話ではない。聞けば、なかなか流行っているらしいぞ。観た友人は、ちゃんと面白いという。しかもだ、特典があるぞという。それで私、我が家は映画館に行くことにした。地方の、土曜だが、イオン営業前の9時台だって云うのに、イオンシネマは混んでいた。ジュースが、ポップコーンが、の列は長い。やっとの思いで買って、中に入ると、あらまあ。予約の時から埋まっている方だなあ、なんて思っていたが、当日は、ほぼ満席だった。組と組を挟んで空席がひとつ、くらいなもので、大盛況。
驚いた私、妻に聞く。「えっ、公開から2週間たっても、まだこんなに? そんなに『ちいかわ』ってすごいの」これに妻「流石にね、そんなことはない。コレのせい」と言う。

イエス、シール。すごいよね、小学生の女の子はみんなやっている。から、平成女子、昔も流行っていたらしいからね、そのリバイバル。『BONBON DROPU』、そう「ボンドロ」ってなかなか買えないよね? マジでどこ行っても売ってねえ。が、二度ほどお目にかかれまして、興奮した。一緒にいた娘は飛び跳ねて喜んだ。気がつくと財布の紐は緩み、散財した。ああ、脱線。
そうなんですよ! 「ボンドロ」が貰えるという大特典があったからです。だから我が家もご多分にもれず、本当は盆にでも行こうかねえ、なんて話をしていたところ、それに私はまだ仮だったのですが、予定を早め、私も行くことになって、8月8日(土)の朝一番の上映に観に行きました!
これ、正規のシールより一回り小さいのだけど、とても可愛い(個人的には、そしてあくまで私の意見だけどね、サイズは一緒にして欲しかったな……言うなよってツッコみ入るけど、というか貰えるだけでありがたいんだが、規格は一緒に……ボンドロは貴重だからシートシール収納の人が多いと思うんだけどな……もうちょっと隙間あってもいいからさ、同じにさ……もう、止めておこう。どこかから怒られそうだ)。
という特典特大脱線したが、違うんだ。それだけなら私は書かない。僕が言いたいのは、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観たんだけど、とてもよかったって話。この映画、ただの子供映画じゃないよ。可愛い面しているけど、なかなか深い。だから記事にすることにした(詳しくは魅力同様、後述する)。
2026年7月24日より公開。原作・脚本はナガノ。監督に及川啓、上映時間は99分。公開14日間で観客動員数350万人、興収50億円を突破! このペースだったら、100億行っちゃうかもね。大ヒット上映中!
簡単なあらすじ
イラストレーターのナガノが2020年よりX(旧Twitter)にて原作漫画を連載し、「日本キャラクター大賞グランプリ」を3度受賞、22年に放送開始されたテレビアニメもYouTubeでの見逃し配信総再生回数が4億回を超えるなど、数々の社会現象を巻き起こしてきた大人気コンテンツ「ちいかわ」をアニメーション映画化。原作者・ナガノによる完全監修のもと、原作漫画シリーズの中でも特に人気の高い長編エピソード「セイレーン編」を映像化し、とある島を訪れたちいかわたちが繰り広げる大冒険を壮大な音楽と迫力の映像で描き出す。
ある日、広場でくつろいでいたちいかわとハチワレのもとに、顔にチラシを貼り付けたうさぎが現れる。ハチワレがチラシの内容を確認すると、それは「特別な島」への招待状だった。「島でのカンタンな討伐で100倍の報酬をもらおう」「限定島ラーメンに限定スイーツ、甘いもの辛いもの全部実質無料」といった言葉に釣られて島合宿に参加することを決めたちいかわたちは、チラシの内容を怪しがるラッコとともに船に乗り込み、島に上陸するが……。
「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」などのCygamesPicturesがアニメーション制作を担当。
面白いと思うところ
そもそも『ちいかわ』って、可愛くて、ハッピーに見えても、結構ダークなんだ。というのが、まずは僕が思う前提条件ね。その上で、『ちいかわ』の面白いところを整理すると、3つあると思う。
「可愛い」と「不穏」が同居していること。
キャラクターは小さくて、丸くて、表情も愛らしい。ところが、その子たちが暮らしている世界は、決して「可愛いだけの世界」ではない。仕事をしなければならない。報酬を得なければならない。危険なものを討伐することもある。頑張ったからといって、必ずしも報われるわけではない。ここが、ものすごく面白い。
普通の「可愛いキャラクターもの」なら、可愛らしい世界そのものが安心できる場所になっている。でも『ちいかわ』では、可愛い姿をした小さな生き物たちが、わりとシビアな現実の中で生きている。
だから「可愛い」の裏側に、いつも「大丈夫かな?」がある。
「努力すれば幸せになれる」という単純な世界ではないこと
これ、僕は『ちいかわ』のかなり重要なところだと思う。頑張る。働く。怖いものと戦う。友達を助ける。それでも、世の中は必ずしも自分の思い通りにはならない。だからこそ、「ちいかわ」たちが「小さな幸せ」を手に入れた瞬間が、ものすごく嬉しく感じられるんだ。おいしいものを食べる、友達と一緒にいる、何かをもらう、ちょっとしたことで喜ぶ、そんなこと。これは、「幸福のハードルが低い」のではなく、「幸福が大きなものではなくても、それを幸福として受け取る力がある」と僕は感じるんだ。
善悪が単純じゃない。
ここは特に大人がハマるところだと思う。『ちいかわ』の世界って、「こいつが悪者です」「こいつを倒せば全部解決です」という構造だけではない。立場が違えば見える世界も変わる。誰かにとっての幸せが、別の誰かにとっては不幸になることもある。
そして、それを可愛い絵柄でやってしまう。この「可愛い絵柄と、割り切れない現実」の落差が、『ちいかわ』独特の毒なんじゃないかなと思う。これよ、ハマるよ。
で、今回の映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』なんだけど、今回の映画は原作のいわゆる「セイレーン編」を劇場アニメ化したものなんだけど、もちろんここではネタバレは避ける。まず、「『ちいかわ』なのに、ちゃんと冒険映画になっている」。長尺、こんなに長く動いている「ちいかわ」たちを、僕はまだ見たことがなかったもので、まずそれが面白かった。そして、普段の短いエピソードで感じる「ちょっとした不安」や「妙な怖さ」が、映画になることで大きく膨らんだ。
そしてもう一つ。可愛いから怖い。これがね、今回の映画を語るうえでかなり重要だと思う。
怖いものが怖いのではなく、あの『ちいかわ』の世界で起きてしまうから怖い。普段なら「かわいいなあ」と眺めているキャラクターたちが、危険な状況に置かれる。その瞬間、観客側がキャラクターに対して抱いている愛着が、そのまま緊張感になる。
実際のところ、公開直後の映画レビューでも「可愛いは大前提だけど、内容は重い」「子供には怖いかもしれない」といった感想が目立っているのは君の耳にも入っているのではないだろうか。
こういう人にお勧め
ここで僕が『ちいかわ』を、単純に「可愛いキャラクターが好きな人」だけで推してもいいが、当然それだけじゃない。それはもちろんなのだが、この映画、見た目で騙されちゃいけない。深いぞ。ただ、例えばどんな人に、と言うのならば、「可愛いものが好きだけど、ちょっと毒のある作品も好きな人」「ほのぼのしているのに、どこか不穏な物語が好きな人」「単純な勧善懲悪ではない作品が好きな人」「大人になって、現実の理不尽さを知っている人」とか、そう、毒・不穏・単純な~・理不尽……そんなキーワードだけで、「好き!」って、ならこの映画、かなり相性がいいと思うね。
僕はさ、『ちいかわ』って、可愛いキャラクターが怖い世界にいる作品じゃないと思う。「可愛い」と「怖い」が、同じ世界の中に最初から存在している作品なんだと思うんだよね。……伝わるかな? 観た人向けで、ちゃんと書くよ。だけどもし、まだ観ていないのならば、観てからおいでませ。この記事のメインは言わずもがな、観た人向けで僕が長ったらしく好き放題書くところなんだ笑 面白いものにする。君を、ハッとさせたい。
観た人向け
批評、好き放題に長文。『ちいかわ』はなんのメタファーだろうか
さて、ここからが長いぞ。むしろ、ここからが僕の語りたいところ。これまでは全部、ただの紹介にすぎない。
まずはおさらい。鑑賞後に、携帯にメモをしたことをざっと書く。
あれ、これ『銀河鉄道999』じゃね、美しきメーテル! じゃなくて鉄郎が永遠の命求めて機械の体を……が乾電池なわけね。なるほどメルヘン、可愛いものだ。
毒親セイレーン。人魚たちと遊ぶ。視野が狭めえ、身勝手なやつだ。いるいる。顔無し葉っぱ1枚くん(ヒトハ)と2枚ちゃん(フタバ)の2人組のうち、1人がセイレーンの背びれドーンで死んじゃう。辛い……寂しいな。←復讐心はなし、仕方ない。 あっ! そう言えばあの人魚を食べれば永遠の命が手に入ると聞いたぞ。ほな、ハントして食べるわけで、ほんまや! 電池式になったぞ、これで永遠。これにセイレーンはブチ切れ。復讐だ、関係ない人まで巻き添えで皆殺し。見境ない犯人捜しの時間だ。
ハチワレ:討伐って、いいことなんだよねえ……
ちいかわ:見ちゃった。どうすればよかった……
これは、投げかけだ。
エンドクレジットの後に、バレたバレたぞ、2人は別の島に逃げる。が、残酷。追う、セイレーン。
と、こんな話だったわけで、僕は、この映画のメタファーは、かなり大きく言えば、「欲望と、その欲望によって生まれる搾取」なんじゃないかと思う。
ただし、これだけだとちょっと普通で、もう一段深くすると、「自分が被害者だと思っている人間も、別の誰かにとっては加害者になり得る」という話に見える。
これが『ちいかわ』の恐ろしいところなんじゃないかな。たとえば、映画の導入からしてそうだった。「簡単な仕事で100倍の報酬」「美味しいものが食べられる」「特別な島へご招待」……魅力的だよね。これ、僕たちの現実社会でも、そういう「おいしい話」ってある。楽して稼げる。限定商品。無料。特別待遇。あなたにだけ教える秘密……『ちいかわ』では、それがものすごく可愛らしいキャラクターたちに提示される。
でも、観客はだんだん「待てよ」と思う。そんなにうまい話があるか?
これって、現代社会そのもののメタファーとして読めるんじゃないかな。
そして、もう一つ僕が面白いと思うのが、「食べること」。ここはかなり重要な気がする。『ちいかわ』では食べ物がとにかく魅力的に描かれる。ラーメン、スイーツ……。映画でも島の魅力として食べ物が前面に出てくる。
でも「食べる」という行為は、実はすごく残酷でもある。生きるためには食べなければならない。その一方で、自分が食べるということは、何かを消費するということでもある。
つまり、「生きるために誰か/何かを消費する」という、人間の根源的な矛盾まで見えてくる。
ここまで考えると、『ちいかわ』って「可愛いキャラクターの日常漫画」じゃなくて、かなり変な作品なんだよ。
だって、「ちいかわ」たちは、働く・稼ぐ・食べる・欲しがる・怖がる・友達を助ける……という、ごく普通の人間の営みをしている。
ただ、それを人間よりずっと小さくて、弱くて、可愛い存在にやらせている。
だから、こっちが勝手に自分を重ねてしまう。
そして今回の映画では、それが「島」という閉じられた場所に持っていかれる。島って、映画では単なる冒険の舞台だけど、メタファーとして考えるなら、僕にはちょっと「社会の縮図」にも見える。
そこには「欲しいもの」がある。「報酬」がある。「食べ物」がある。「誘惑」がある。
そして、その裏側に「誰かの事情」がある。そう考えると、タイトルの「人魚の島のひみつ」って、単に「島に隠された秘密」というだけじゃなくて、「自分が見ている世界の裏側には、何が隠れているのか」という問いにも見えてくる。
ということはだよ、『ちいかわ』は「弱い者が強い者に食われる世界」のメタファーではなく、むしろ「誰もが誰かを食べながら生きている世界」のメタファーなんじゃないか。……おお、なんかちょっと怖くなってきたww。
──可愛い。だから油断する。笑う。だから怖さに気づくのが遅れる……そして最後に、「あれ? これって僕たちの世界と同じじゃない?」と気づかされる。可愛さは、この作品の「カバー」じゃない。可愛さそのものが、メタファーを成立させるための仕掛けなんじゃないだろうか。
僕が使う「メタファー」って、まんま「暗喩」、そこに隠された「メッセージ」、とかじゃなくて、要は作者の答え(意図)を当てるゲームじゃなく、「この作品、こう読めるんじゃない?」と読み手が好き勝手に考えることなんだよね。当てるのは、考察だ。だから、僕のは批評。これが楽しい。
まず、セイレーン。僕はセイレーンを、単純な「悪役」だとは思いたくない。むしろ、「満たされない欲望」そのもののメタファーとして見ると面白いと思う。
セイレーンは「歌」によって相手を惹きつける存在だよね。古典的なセイレーンのイメージでも、歌は誘惑の象徴になっている。
つまりセイレーンは、「こっちに来れば、あなたの欲しいものがあるよ」と呼びかける存在。これって、今回の映画の冒頭にある「簡単な討伐」「100倍の報酬」「食べ物」という誘惑と、かなり響き合っている。
そして重要なのは、誘惑される側も、別に馬鹿だから引っかかるわけじゃないということ。欲しいんだよ。お金が欲しい。美味しいものが食べたい。楽をしたい。いい思いをしたい。それは悪い欲望じゃない。むしろ、ごく普通の欲望だ。
だから、怖い。「欲望を持つこと」自体が罠になり得るから……
そして、人魚。人魚って、これまで魅力的な存在として描かれてきたでしょう。美しい。海の向こうにいる。人間とは違う。こちら側から見れば、ちょっと神秘的。
つまり人魚は、「こちら側にはないものを持っている存在」なんだと思う。だから僕は、この映画の「島」を、「欲しいものが存在する場所」とみた。都会でもない。いつもの場所でもない。わざわざ海を越えて行く。そこには、普段とは違うものがある。でも、その「特別な場所」に行くためには、何かを捨てたり、何かを見なかったことにしたりしなければならない。
これって、僕たちの現実でもあるよね。「ここじゃないどこかへ行けば、もっと幸せになれる」という考え方だ。転職すれば。お金があれば。もっといい暮らしができれば。あの場所に行けば。あの商品を手に入れれば。人間って、いつも「向こう側」に幸福があると思ってしまう。
だから僕は、島=「理想郷」と読むのも面白いと思う。
ただし、理想郷には必ず「代償」がある。ここが『ちいかわ』らしい。「夢の島へ行きました。みんな幸せになりました」では終わらない。
むしろ、「あなたが欲しいものは、本当にあなたを幸せにするものなの?」というところまで突きつけてくる。
そして、もう一つ重要なのが「歌」。これ、僕はかなり好きなモチーフなんだ。歌って、理屈じゃない。「この条件ならあなたはこう行動するはずだ」という論理ではなく、直接、心に入り込んでくる。
だから歌は、「理性を飛び越えて、人間を動かしてしまうもの」のメタファーとして読める。広告だってそうだし、SNSだってそう。「これが欲しい」と思わせる。「みんな持ってる」と思わせる。「ここに行けば幸せになれる」と思わせる。そういうものは、必ずしも論理で僕たちを説得しているわけじゃない。「なんとなく欲しくなる」。セイレーンの歌って、そういうものの象徴として考えると、現代的でちょっとゾッとするんだよ。
そして、さらに僕が気になるのは、「食べる」と「食べられる」の関係。ここは、さっきの話とつながる。僕たちは食べる側になりたい。でも、世界のどこかでは誰かが食べられる側になる。『ちいかわ』では、それを可愛いキャラクターたちの世界に置き換えている。だから、「美味しいものを食べたい」という小さな幸福が、「誰かを犠牲にしてまで、それを得ていいのか?」という問題に反転する。
これ、かなり『ちいかわ』の怖さだと思わない?
つづける、僕がこれは面白いと思う読み方なんだけど、セイレーンは「他者」ではなく、「自分の中にある欲望」なんじゃないか。そう考えると、セイレーンを倒して終わり、という話ではなくなる。だって、自分の欲望は倒せないから。「もっと欲しい」「もっと楽したい」「もっと食べたい」「もっと幸せになりたい」これは誰にでもある。
だから『ちいかわ』の世界では、怪物を倒したら全部解決するわけじゃない。怪物の外見をしていなくても、怖いものは存在する。
そして、それは案外、自分の中にもいる。ここまで来ると、僕は『ちいかわ』そのものを、「可愛い姿を借りた、生存競争の寓話」と呼びたくなる。働いて、食べて、欲しがって、怖がって、誰かと助け合って、ときには誰かを傷つけてしまう。それでも生きていく。その姿を、ものすごく小さく、ものすごく可愛く描いている。だから大人が見ると、ふと自分の人生が重なってしまう。「ちいかわ、かわいいなあ」と笑っていたはずなのに、「……あれ? これ、俺の話じゃないか?」となる。
僕はそこに、『ちいかわ』の最大のメタファーがある気がする。「ちいかわ」たちは、僕たち自身なのかもしれない。
この映画、かわいい仮面をつけているせいで、分かりづらくなっているけど(故意だけどね)、内容はちゃんと映画だった。しかも全然可愛くねえ。考えるし、ちゃんと胸糞悪いラスト。色々考えさせられる、本格派だった。
どうかな。もうお腹いっぱいかな? でも最後に、まとめ? のようなデザートがある。
ヒトハとフタバ。そしてハチワレについて思うことがある。
まず、ヒトハとフタバ。僕は「顔がない」のではなく、「顔を持つことを許されていない」ように見えるんだ。顔って、すごく重要なものだよね。目があれば、何を見ているか分かる。口があれば、何を言いたいか分かる。表情があれば、感情が分かる。
つまり顔は、その人を「個人」として認識するためのもの。ところがヒトハとフタバには、それがない。だから観客は、彼女たちの内面を直接読むことができない。これ、単に「ちいかわ世界のデザインだから」で済ませることもできるけれど、メタファーとして読むなら、僕はむしろ、「個人として見られていない存在」を表しているように感じる。
そして「ヒトハ」「フタバ」という名前も面白い。1人、2人という個人名ではなく、まるで「ひとつ」「ふたつ」と数えられる存在みたいに聞こえる。ここには、「あなたはあなた」という個人性よりも、役割や属性が先にある世界が透けて見える。「この人は何者なのか」ではなく、「何をする存在なのか」で見られてしまう。
これって、社会では結構あるよね。会社員・店員・客・労働者・消費者……と、名前が消えて、役割だけが残る。
だから僕は、ヒトハとフタバの「顔がない」を、「個人が役割に飲み込まれていくこと」のメタファーとして読んだ。これも、すごく怖い。
そして、ここがセイレーンの話ともつながる。セイレーンは「欲望」を象徴しているのではないか、とさっき話した。
一方、ヒトハとフタバは「欲望のために役割を与えられた存在」として見ることができる。すると、欲望する者と、欲望を満たすために使われる者。という構造が見えてくる。
これは、かなりダークだ。
そして、ここでハチワレが登場する。
僕は、ハチワレを『ちいかわ』の中でも、かなり特殊な存在だと思っている。ちいかわは、基本的に「怖い」「嬉しい」「悲しい」がストレート。うさぎは、そもそも理解不能(笑)。その中でハチワレは、言葉を使って世界を意味づけようとする。「これって○○ってこと?」「嬉しいね」「一緒に頑張ろう」みたいに、出来事を言葉にする。
つまりハチワレは、「世界を理解しようとする存在」なんじゃないのだろうか。
そして、だからこそ明るい。世界が優しいから明るいんじゃない。世界を「こういうものだ」と言葉にして、意味を与えようとするから明るい。ここが僕にはものすごく重要に思える。ちいかわは、世界に対して泣く。うさぎは、世界に対して叫ぶ。ハチワレは、世界に対して「言葉」を返す。だから3人組が成立する。ちいかわは感情、うさぎは衝動、ハチワレは言葉……こう考えると、すごく綺麗じゃない?
僕がハチワレについて一番好きなのは、彼のポジティブさが、必ずしも「世界は素晴らしい」という意味じゃないところ。むしろ逆。世界が怖いからこそ、「でも、一緒なら大丈夫」「楽しいね」「嬉しいね」と、言葉を使って小さな幸福を作っていくんだ。
これは僕たちにもできる。人生にはどうしたって嫌なことがある。理不尽もある。失敗もある。怖いこともある。それを全部消すことはできない。
でも、「今日、これ美味しかったな」「この映画、面白かったな」「友達と話せて楽しかったな」と、言葉にすることで、ほんの少し世界を自分の側に引き寄せられる。
だからハチワレの明るさは、能天気さではなく、生きるための技術なんじゃないかと思う。そう考えると、さっきのヒトハとフタバの「顔がない」とも対照的なんだよね。ヒトハとフタバには、顔がない。ハチワレには、顔がある。そしてハチワレは、言葉を持っている。
つまり、「自分は何者なのか」を表現する手段を持っている。顔と言葉。それは、「自分はここにいる」と世界に対して言うためのものなのかもしれない。
だから僕なら、今回の映画を考えるとき、セイレーンは欲望・島は理想郷・ヒトハとフタバは役割に飲み込まれる個人・ハチワレは言葉によって世界に意味を与える力。というふうに置いてみる。
そして、その全部を包んでいるのが『ちいかわ』なんじゃないかな。
つまり、「世界は思い通りにならない。それでも、自分が何者なのかを失わず、誰かと一緒に、小さな幸福を見つけていく」という話。
──こうなると、ちいかわ、めちゃくちゃ哲学的じゃない?ww
あなたはどう思う。最後にメタファーお兄さんから、まとめを。と言っても、もうここまで読んでくれたのならば、分かるよね。繰り返しだ。『ちいかわ』は、可愛いキャラクターを使った現代社会のメタファーなんだ。きっとね。だから、ハマる。
皆さんはどう思いましたか? こういうの書くと、ほんまにそうやったっけ、とか思って、というのもあるし、また観たいなって思う。よし、映画館に行こう!
あと、いつもそうだけど、今回もちらほら散見された。映画館ではちゃんとジュースとポップコーン買ってね! 持ち込みはダメだよ! 映画好きは、映画を守りたい。というかルールだし、映画館の収益って、ほとんど飲食ですから! 大切な余談。
なかなかの長文、最後まで読んでくれてありがとう。それではまた次の記事で!
そういえば映画館ではこれもオススメ! 全部で10パターンあるよ。ぜひ、コンプリートしてみよう。島二郎と同じポーズ、腕組んで、いい写真を手に入れてみよう。



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