『木曜殺人クラブ』あらすじ付き作品紹介及び批評

映画

基本情報

 Netflixオリジナル映画、2025年10月に配信された『木曜殺人クラブ』について紹介します。監督は『ホームアローン』や『ハリーポッター』を手掛けたクリス・コロンバス。ジャンルはミステリー・コメディ(≒コージーミステリー※)で上映時間は118分。

 さて続けてキャスト紹介ですが、

ヘレン・ミレン/ピアース・ブロスナン/ベン・キングズレー/セリア・イムリー

 んんん……この名前だけで分かる人いる? 私は誰も知らないよ笑。これで知っている人は相当マニア。ええ皆さま、ご老体でございます。主人公のエリザベスを演じたヘレン・ミレンさん、御年80歳です。ですが、皆々様、大御所です(きっとそうなのでしょう!)。しかし、これではみんながイメージできない。そこで私、日本版で考えてみました。順番に、

吉永小百合/役所広司/柄本明/大竹しのぶ

 ……素晴らしい、なんて分かりやすいんだ! なるほど、大御所じゃん!!ww
 ちなみにどうしてこうもご老体ばっかりだって言いますと、それはね、彼ら彼女らはみんな高級高齢者施設「クーパーズ・チェイス」の住人なんだ。そしてそこが映画の舞台ってわけ。

(左から柄本明/吉永小百合/役所広司/大竹しのぶ……どうかな?ww)

 なお原作はイギリスのテレビ司会者・プロデューサーとして知られる「リチャード・オスマン」で、本作がデビュー作。2020年刊行ながら世界的大ヒットとなり、シリーズ化されています、そして映画化権は出版前から争奪戦となったらしいですよ。ふむふむ

 ※「居心地の良さ(cozy)」を重視したミステリーで、ライト。ハードボイルドとは正反対。限られたコミュニティを舞台に素人探偵が活躍するのが特徴。このブログでも以前紹介した米澤穂信の『氷菓』なんかが近いですね。

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『氷菓』あらすじ付き作品紹介及び考察
基本情報 2001年刊行。作者は米澤穂信。角川文庫。私が知っている表紙は可愛い女の子だった。アニメ化している。それがなかなか評判がいいとは聞いていた。で、はて「米澤穂信」という。あれれ、たしか私の知っている「米澤穂信」は最近、『黒牢城』で直…

簡単なあらすじ

 高級老人ホームで余生を持て余す4人。優雅に暮らす。そんな彼らのひとつの趣味は、毎週木曜日に未解決事件を語り合うこと。その名は『木曜殺人クラブ』。しかし、遊びだ。所詮机上のこと、物足りない……なんて思っていたところに本物の殺人事件が起きた。顔見知りが死んだ。このことを、元看護師・ジョイスは嬉々と走り回り、そのことをクラブ員に伝える。

HARU
HARU

この木曜殺人クラブってタイトル、西村京太郎サスペンス感あるww

PENくん
PENくん

英語タイトルもまんまだったなww

面白いと思うところ

 まさに「コージーミステリー」! 会話劇とユーモアの心地よさがたまらない。本作は、人生の黄昏を描く優しさがあります。

 老人ホームが舞台なのに、「老い」の映画ではない。一般に、「老い」は「衰え」として描くことが多いと思うのですが、この映画では、「老い」は「経験」という最強の武器になっている。若者にはない交渉力、人脈、観察眼、ユーモア。その積み重ねが事件解決につながる。例えばそう、老人だから見逃される、警戒されない、それを逆手にとって捜査。こういうところ、面白い。

 この作品はね、観終わった後に、「歳を取るのも悪くないな」と少し思わせてくれるんだ。

 で、そこでいきなりだけど君にクイズ、これなぁんだ。

IKT

さすがに笑った。さあ、なんのことだろう。ユーモアだ。DAI語だよ。答えは観た人のところに書いてあるけど、ぜひ、劇場で、じゃないけど、映画を観てみて。面白いよ。

 映画はネットフリックスで観れます。

こういう人にお勧め

 まずは、ありがとう。じゃないが、とりあえず映像が綺麗だね。いやあ、映画は派手なアクションじぇけえ、とかはもう古い。歳をとったせいか、少し趣向が変わった。派手さより、背景に……なんて、うまく言語化できないけど、外見より中身重視みたいに言ってみるww

 ということで、「派手なアクションより会話劇が好き」だとか、ミステリー好きに、あと少し大人の映画な気もする。たとえばあの2人がどうするのか、なんて分かりきっていたが、先が読めちゃって……なんて思わないくらいにはなった。それを、じんわり受け止める人に(ごめんね、これじゃあ分からないだろう、そう思う。でも、観た人が、観ていない人に、ああこの人なら、という風に、少し選ぶかもしれない……)、是非。大人なコメディ好きに。

 ここからは、もし、もしの話なんだけど、僕の話と、君に提案すること。まずは僕の話から。今更なんだけど、入ろう、入ろうとしてから2年ごしにネットフリックスに入った。結果、めっちゃいい。なんたって、ここでしか観られない作品がたくさんある。今回紹介した『木曜殺人クラブ』もうそう、でもなんと言ってもすごいのはドラマだよね! 流行った『サンクチュアリ』に『地面師』だって最近じゃ『ガス人間』だってそう、他にもたくさんあるし、観たけど、全部おもろい。比較初期の『全裸監督』『イカゲーム』……まだ観ていない。楽しみだ。とにかくだ、価値がある。なので、よかったら、もしまだ加入していない、君に提案する。まだの人、ここから入ってみてね。あとね、オリジナル作品はもちろんなんだけど、我が家では僕と妻、特に妻は昔のドラマに夢中です笑 いやあ、サブスクすごい。はい、次は、同じくNetflixオリジナル映画の『ドント・ルックバック』を記事にする予定です。ご参考までに。

観た人向け

ネタバレは批評

3つの殺人、愛の為に超えてしまった一線

 そうだった、愛だった。思いだしてみよう。本作の内容の整理をすればこんな感じだ。

2つの事件、殺人が起きた。そしてそれは、冒頭に、クラブで議論した1970年代の未解決事件がクーパーズ・チェイスの墓地で一本化される。そして多層的な解決が物語の核となる。

ひとつめの事件は、ボグダンが加害者。パスポートを奪われた移民搾取の末、揉み合いでトニー・カランを致死。スティーヴンのチェス録音が自白断片の手掛かりになる。

ひたつめの事件はジョン・グレイが住民デモの混乱でイアン・ヴェンサムへフェンタニルを注射し、殺した。その動機は妻ペニーの秘密と尊厳を守るためという情の正義。

1970年代の事件は、元警官ペニーがピーター・マーサーに私的制裁を行ない、ジョンが墓地へ埋葬した。終幕はホスピスでの静かな最期と、ジョイスの正式加入という絆の継承へ。

 作中で起こる犯行は、いずれも「私利私欲」ではなく「誰かを守るため」に行われたんだ。
 ボグダンは移民搾取から家族を守ろうとした。ジョンは妻ペニーの名誉を守るために行動した。ペニーは制度が拾えない犯罪に対し、私的制裁を選んだ。……このように一括りに同じ「罪」も動機が異なるため、僕達は単純な善悪の二元論では裁けない(はずだ)。ここには「愛は時に法を超える」という人間の複雑さが表現されているのと思う。

2つ並んだ棺桶

 知り合いが死んだ。嬉々と走り回り、それを伝える。僕は少し気味が悪いと思った。これじゃあ、死が軽くなる。……待て、違った。この作品は「殺人」ではなく「死」を描いているんだ。

 普通なら欠点になりそうな部分だけど、この映画では「死を軽く扱っている」のではなく、「死を人生の一部として受け入れている」という価値観なんだよね。
 そして最後の2つ並んだ棺桶。あのシーンで、この映画がただのミステリーではないことを象徴しているのだと思った。

 普通のミステリーなら、死は事件になる。しかしこの作品では違う。老人ホームという舞台では、死は日常の延長線上にある。だから悲しみを過剰に演出しない。
 むしろ、残された時間をどう生きるか。そこへ物語の焦点を移している。この軽さは、命を軽視しているのではない。死を人生へ組み込んでいるのである。

 あの死を、エリザベスは止められなかったのか?
 →あのシーン、よかったよね。きっと最期になる、とエリザベスも思った。でも止めなかった。……止められなかった。なぜなら、最後の決断だけは本人のものだから。ここではMI6だった彼女でも無力になる。国家は救えても、人生の終わり方は本人しか決められない。この対比が美しい。

 2つ並ぶ棺桶。綺麗だったね。普通なら涙の場面だ。でもこの映画は静かだった。悲劇ではなく、長い人生の終幕。だから切ないのに温かいんだ。

余談(M16とIKT)とまとめ

 MI6(正式名称:Secret Intelligence Service, SIS)は、イギリスの対外情報機関で、国外の安全保障や外交に関する情報収集を担うそうです。要は、都市伝説的なやつ。1909年の設立以来、長らく存在が公にされず活動していたそう、が、1994年にようやく法的に認められたって話。驚き。有名なのはジェームズ・ボンドの『007』としても知られていますが、実際には冷戦やテロ対策といった現実的な任務に携わる存在とのこと。エリザベスのキャラクターは、この現実の諜報文化の延長に置かれていると言えるでしょう。……なるほど、続編がはじまったやつですね。「別班」だ。旬なやつだww

 IKT。まず結論から言うと、日本語字幕の「いっぱいケーキ作って」は意訳でしょう。作中で老人たちがやっているのは、DAI語のような頭文字遊びで、イギリス人同士の内輪ネタのようなユーモア。つまり笑わせることが目的の翻訳なんだ。だから日本語字幕は「意味」よりも「空気」を優先した訳になっている。
 個人的にはかなり上手いローカライズだったと思った。

 まとめ、『木曜殺人クラブ』は、老人が活躍するミステリーではない。人生の終盤に差しかかった人々が、それでも笑い、恋をし、友を失い、事件を解き、「まだ生きる理由」を探す物語である。死は近い。だからこそ毎日が面白い。
 この映画が描いていたのは、殺人事件ではなく「人生の終わり方」だった。

 映画は面白かったので、ぜひ映画もシリーズ化して欲しいものですね。それもあるが、小説読んでみたくなりました。

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